| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-348  (Poster presentation)

DNAメタバーコーディングによるクモ群集の食物網解析
Food web analysis of spider comunity using DNA meta-barcoding

*鈴木紗也華, 東樹宏和(京都大学)
*Sayaka SUZUKI, Hirokazu Toju(Kyoto Univ.)

クモは生態系において中間捕食者として機能しており、腐食連鎖起源の餌生物も捕食することから生態系の栄養流入において重要な役割を果たしている。クモの餌生物を明らかにすることは、複雑な生態系を理解する上で一助となり得る。クモはほとんどすべての種が肉食性とされており、多くの種は昆虫やその他の節足動物などを捕食するジェネラリストである。クモに捕食された餌は液体状になって消化管を通過するため、解剖による餌生物の特定は困難である。現在は網に引っかかった餌の残骸(造網性クモのみ)や捕食イベントの肉眼観察から得られた知見が多くを占めている。DNA解析による餌生物の特定方法は、クモ自身のDNAが大部分を占めてしまい餌生物のDNAの検出が乏しいというのが現状である。さらに、ミトコンドリアCOI領域による分析に関しては、プライマーのユニバーサル性について繰り返し疑義が提起されている。そこで今回、核ITS領域を対象として、昆虫類のDNAを増幅する新しいプライマーを設計した。クモのサンプルは生態学研究センター内の圃場で採集された個体を使用した。Miseqを用いてDNA配列の読み取りを行い、Claidentを用いて得られたDNAの同定を行った。実験の結果から、Diptera(双翅目)、Hemiptera(カメムシ目)、Coleoptera(甲虫目)、 Hymenoptera(ハチ目)などの餌生物と思われるDNAが検出された。これらから、多様な昆虫類を捕食していることが明らかになった。特筆すべきことに、この新規プライマーを使用することによって、クモ自体のDNA増幅を劇的に抑えることが可能になった。現時点では解析途中のため、詳細については会場で議論したい。今後はクモや餌生物のDNAデータベースの充実を図り、より正確性の高い解析が可能になるよう努力したい。


日本生態学会