| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-349 (Poster presentation)
ネオニコチノイド系やフェニルピラゾール系などの浸透移行性殺虫剤は国内においてイネの箱苗施用剤を始めとして様々な農作物で広く適用されているが,これらが生態系に悪影響を及ぼしている可能性が世界各地で指摘されている。国内においては,里山生態系の象徴的生物であるトンボ類に対する負の影響が以前から報告されており,全国的なトンボ類の減少にこれらの農薬が関与している可能性も指摘されている。一方,野生のトンボ類減少には殺虫剤以外の農薬や、様々な環境要因も関与している可能性がある。実際の圃場では殺菌剤や除草剤など様々な薬剤も使用され、周辺の植生や景観も多様であることから,これらが間接的に作用している可能性なども考慮に入れる必要がある。本研究では、以前からトンボ類に関する様々な調査が実施されてきた佐賀平野において10か所の調査地点をもうけ、2017年と2018年の2年間、トンボ類の種構成や個体数を定期的に記録した。また,各調査地点において,水と底質に含まれている残留農薬の分析を行ったほか、水生植物の繁茂状況を水面の被度により評価した。そして、トンボ科とイトトンボ科について、成虫の種数と環境要因との関係を解析した。その結果、イトトンボ科では土中のフィプロニルとその代謝物の濃度が、トンボ科では土中のネオニコノイド類の濃度と水面の植物被度が種数と有意に関連していた。以上の結果から、トンボ目の中でも、分類群によって環境要因の影響の仕方が異なることが示唆された。