| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-350  (Poster presentation)

潮下帯岩礁の写真測量による付着生物の生息適地モデリング
Habitat suitability modeling for sessile organisms by photogrammetry of subtidal rocky shores

*神吉隆行, 中本健太, 早川淳, 北川貴士, 河村知彦(東大大海研)
*Takayuki Kanki, Kenta Nakamoto, Jun Hayakawa, Takashi Kitagawa, Tomohiko Kawamura(AORI, the Univ. of Tokyo)

付着生物群集は,潮下帯岩礁における生物群集の主要な構成要素であり,その分布や種組成を把握することは生態学的に重要である.しかし,付着生物各種の分布がどのような地形条件と関連するかは,明らかにされていない.本研究では,写真測量によって潮下帯岩盤の精密な3次元モデルを構築し,それを用いて,調査地点で優占したサンカクフジツボ Balanus trigonusおよびマボヤ Halocynthia roretzの分布と地形条件の関係性を明らかにすることを目的とした.
 2018年11月に岩手県大槌湾の潮下帯岩礁域で潜水調査を行なった.調査場所において、約3 m×3 m四方の岩盤を5地点選定し,各地点で100〜200枚の写真を岩盤の様々な角度から撮影した.複数の画像から3次元構造を復元できるSfMアルゴリズムを用いて,各岩盤の3次元点群モデルを構築した後,点群モデルをメッシュモデルに変換した.撮影した写真を用いて,サンカクフジツボ(死殻を含む)とマボヤの出現位置をメッシュモデル上の各面に手動で入力した.また,メッシュモデル上の各面において,4種類の地形条件パラメータ、すなわち周辺の海底からの高さ,傾斜,方位,岩盤表面の粗さを算出した.
 写真測量によって,各地点においてmmスケールの解像度で3次元モデルを構築できた.しかし,岩盤の溝やオーバーハング部分の一部については3次元モデル上に復元できなかった.岩盤上のサンカクフジツボとマボヤの分布は大きく重複したが,サンカクフジツボのほうがマボヤよりも高い位置に出現する傾向がみられた。両種の分布はともに,傾斜と表面の粗さよりも,周辺からの高さと方位に影響され,周辺の海底から十分に高い位置にある面と岸向き方位の面で個体数が多い傾向がみられた.これは,沖からの流れが縮流する岩盤の上部および後流渦が生じる岸向き面では,流速が大きくなる場所が生じ,懸濁物食者であるサンカクフジツボとマボヤにとって餌料環境がよいため、個体数密度が高かったと考えられた.


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