| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-351 (Poster presentation)
兵庫県北部を流れる円山川は、下流部の河床勾配が1 / 10,000と小さく、河口から16 km上流まで汽水域が分布する。また、河道内にはワンドやタマリ、湾など多様な止水環境が存在しており、生物多様性の高いエリアである。過去にも円山川の調査・研究は行われているが、周辺の止水環境を網羅した研究は行われていない。本研究ではこれら止水環境における魚類の多様性分布と、水域の構造と魚類相の関係について明らかにすることを目的とした。
調査エリアは、円山川河口から1.6-3.0 kmの範囲である。このエリアにはワンドやタマリ、本流と繋がった湖沼、楽々浦湾(潟湖)といった多様な止水環境がまとまって存在する。これら4タイプの環境ごとに調査区を設定し、さらにそれぞれの調査区内に各3地点の計12地点の調査地を選定した(St.1-12)。調査は2017年6, 8, 10, 12月, 2018年3,5月と、6回実施して季節変化を追った。各調査地の水際において、たも網(幅60 cm、網目3 mm)による追い込み捕獲(追い込み距離1 m)を20箇所で行い(計240箇所)、採集した魚類の同定と計測を行った。あわせて、水深、植生幅、水温、溶存酸素量、電気伝導率および水素イオン濃度の測定も行った。
調査の結果、9科21種、1,068個体の魚類が捕獲された。汽水性のハゼ科で主構成され、なかでもウキゴリ属sp. Gymnogobius sp. が573個体と魚類全体の53%を占めた。
群集構造の分析を行った結果、各調査区の群集構造は季節ごとに変化することが確認された。なかでも湖沼は、2017年6月と2018年5月は他の3調査区とは大きく隔たりがあることが確認できた。他の調査区と比べ、湖沼にはウキゴリ属稚魚が多数確認されたためであると考えられる。物理環境要因との相関についても解析を行った結果、水深との間に負の相関が認められた。
また、確認できた稚魚が季節を追うごとに体長が増えていることから、調査エリアは、主に汽水性の小型ハゼ科魚類の生育場所として機能していることが示唆された。