| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-353  (Poster presentation)

標高の変化によるハチ群集の種構成、機能的形質、分類学的多様性の応答
Responses of species composition, functional trait and taxonomix diversity in Hymenoptera communities with altitude change

*上森教慈, 菱拓雄(九州大学)
*Kazushige Uemori, Takuo Hishi(Kyushu Univ.)

ハチは昆虫の中でも特に種数が多く,多様な食性ギルドを持つことで,送粉,食物網の制御など生態系サービスに重要な役割を果たしている。しかし、複数のギルドを含むハチ群集を扱った既存研究はほとんどなく、群集形成の機構はよくわかっていない。また、地理条件が複雑な日本列島では、標高勾配を扱った既存研究と同様の機構がはたらいているとは限らない。これらを明らかにするために、九州中央山地の標高傾度に沿ったハチ群集の、種,機能形質,分類群の構造の変化の解析を行った。
九州中央山地に位置する九州大学農学部附属宮崎演習林,樫葉国有林,宮崎大学田野フィールド(演習林)の標高の異なる13地点 (177 ~ 1604m) で、イエローパントラップを用いたサンプルの収集を6月上旬(梅雨前),7月下旬(梅雨明け),9月中旬(秋)の3回行った.地点ごとに種多様性、標高の増加に反応すると予想される5つの形質(体サイズ、栄養段階、食性ギルド、活動期間、生息標高範囲)の多様性および群集加重平均(CWM)、分類群の多様性、分布域指標の多様性およびCWMを求め、標高勾配に沿って線形回帰した。
種多様性は標高の増加に伴い増加した。活動期間のCWMは高標高ほど短くなった。分類群の多様性は高標高ほど増加した。分布域指標の多様性は高標高ほど増加し、CWMは北への偏りを示した。これらから、高標高において種の多様性が増加したのは、機能的な側面からは、ストレスにより活動期間が制限されることで季節的な棲み分けが生じたため,系統地理的な観点からは、北方系種が加入したためだと考えられる.一方,低標高で種多様性が減少したのは,活動期間が長いことで暖かい気候に適応した競争に強い種が寡占していること、地理的には九州島の南方は海で隔てられており、南から種が加入できない状況にあることで種多様性が低くなったと考えられる。


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