| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-354 (Poster presentation)
気候変動が生物多様性や生態系機能に及ぼす影響を把握することは、生態学において重要な研究課題であり、気候変動に伴う生物の季節性や分布域の変化が引き起こされる経緯の解明は急務の課題である。本研究は鳥類を対象として、温帯域の山岳における垂直分布の季節変化を記載し、鳥類の垂直分布の季節変化に与える気温の影響を評価することを目的として、野外調査をおこなった。調査地は、長野県西部に位置する乗鞍岳(標高3026m)の東側斜面(700-2800m)で、2018年2月の厳冬期から繁殖期の6月にかけて、鳥類の垂直分布を調査した。分布調査は、音声と気温ロガーを設置するとともに、ラインセンサスを24日間行い、高山における分布の動態を記録した。記録された62種の鳥類について、冬季から夏季にかけ、利用標高の季節変化を記述した。そのうち日本国内で越冬し、乗鞍岳の高山で繁殖することが確実な14種のスズメ目鳥類については、標高2100m以上の高山帯での初認日を調べた。その結果、標高2100m以上での初認日は種によって異なり、季節の進行に伴い高山で記録される種が増え、初認日が最も早かった種と遅かった種では、97日の差があった。しかし初認の後、すべての種が定住し繁殖活動を始めるわけではなく、急な低温に見舞われた場合、数日間高山で記録されなくなる種も確認された。各種のさえずりが記録された気温を調べたところ、コガラが最も低く、次がヒガラであった。そしてさえずりから推定した好適温度が低い種ほど、標高2100m以上が生息に好適な気温となる時期が早かった。つまり、各鳥類はそれぞれの好適温度に応じて、適した温度環境(標高帯)を利用し、高山を利用する期間を変化させていることがわかった。