| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-358  (Poster presentation)

網状流路における魚類の流路選択
Stream selection by fishes in a braided river

*東垣大祐, 井上幹生(愛媛大学院)
*Togaki DAISUKE, Mikio Inoue(Ehime Univ.)

局所群集の決定過程は,生息場所外部からの分散・移入と生息場所内部における環境への応答および生物間相互作用といった2つの側面に大別される.河川中流域では,河川本流以外に,それとつながる二次流路や沼など特性の異なる様々な水域生息場所が形成される.このようなシステムにおける魚類群集の形成では,内部過程よりも移入・分散過程がより卓越的にはたらく例が多い.
愛媛県の重信川中流域は複数の流路が網目状に発達する網状河道を呈す.河道内には,水温や濁度等、特性の異なる流路が隣接して存在するが,それらは増水時には互いに連結し,その際に,魚類の移動分散が起こる.この移動分散時における魚種間での流路選択性の差違は,河道内における魚類の局所群集の形成に大きく影響すると考えられる.本研究では, 重信川中流域の主要魚種(オイカワ・タカハヤ・オオシマドジョウ・シマヨシノボリ)の流路選択について検討した.2018年6月から9月の期間中,重信川の網状河道において,2つの流路が合流する地点を見つけ,それぞれの流路に袋網を設置し,遡上する魚類の個体数を調べるとともに水温,水深,流速,流量および濁度を計測した.そして,遡上個体数が多かった方の流路を選択された流路とみなし,その特性を検討した.その結果,タカハヤとオオシマドジョウは流量の少ない方を選択したのに対して,オイカワは水温の高い方,シマヨシノボリは流速の早い方を選ぶ傾向がみられた.重信川の網状河道においては,しばしばタカハヤとオオシマドジョウが特異的に優占する流路がみられるが,それは,今回見られたタカハヤとオオシマドジョウの分散時における流路選択の類似性によって説明できると思われた.河川中流域のように異質な局所生息場所が流水によってつながるシステムでは,分散時における流路選択性の種間差が群集構成に大きな影響を与え得ると考えられた.


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