| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-363  (Poster presentation)

メタ個体群と景観生態学の狭間:「分断」景観下で示すバッタ類の多様な分布から
Challenge to uncertain boundary in metapopulation & landscape ecology : Using multi-species of grasshopper in apparent fragmented landscape

*中島一豪(東京大学), 長谷川雅美(東邦大学), 宮下直(東京大学)
*Kazuhide NAKAJIMA(The university of Tokyo), Masai Hasegawa(Toho university), Tadashi Miyashita(The university of Tokyo)

開発や放棄など人為的な要因によって生じる分断景観において、生物は生息地パッチ間の移入と絶滅のバランスによってメタ個体群を維持している。分断化が生物個体群に及ぼす影響を評価するには、生息地パッチ内の局所環境に加え、生息地パッチ間の移動のし易さである連結性の影響を評価する必要がある。メタ個体群生態学では、パッチとマトリクスとを二分法的に扱ったパッチ単位の指標が用いられてきた。しかし、景観内の様々な土地利用タイプを生息地として利用している生息地ジェネラリスト種に関しては、生息地パッチとマトリクスとを区別し難く、パッチ単位の指標を用いることが出来ない。よって連結性の評価は、景観内の各土地利用タイプが対象種の生息地として利用可能か否かを考慮した景観指標を用いるべきである。
本研究では、千葉県北総地域にモザイク状に広がる半自然草地, 造成跡地, 放棄農地, 畑地, 水田の畦に成立するイネ科草本主体の草地植生において、イネ科のジェネラリスト植食者と考えられている複数のバッタ科昆虫を対象に、個体数および植生調査と、室内での飼育実験から各土地利用タイプの生息地としての利用可能性を餌資源から評価し、調査サイト周辺の土地利用タイプベースの景観指標を用いて以下の仮説を明らかにする。

1.各土地利用タイプに優占するイネ科草本はバッタ科昆虫各種にとっての餌資源としてのポテンシャルが異なる。
2.バッタ科昆虫各種の局所個体群密度は餌としてのポテンシャルの高いイネ科草本の局所被度と、その種が優占する土地利用タイプの連結性によって正の影響を受ける。


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