| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-394  (Poster presentation)

都市化で分断化されたアカハライモリ個体群の生態学的特徴
Ecological characteristics of populations of Japanese newt separeted by urbanization

*井上祐子, 工藤陽介, 齋籐大河, 西廣淳(東邦大学)
*Yuko INOUE, Yosuke Kudo, Taiga Saito, Jun Nishihiro(Toho Univ.)

アカハライモリCynops pyrrhogasterは千葉県のレッドデータブックにおいて最重要保護生物(ランクA)に指定され、特に北部では絶滅したと考えられる地域も多い。本研究では都市開発が進む千葉県北西部において、孤立して存在する現在は耕作されていない谷津環境に生息するアカハライモリの個体群を2017,2018年の2年間調査し、その生態学的特徴を明らかにした。調査は4-12月の月約一回の水域調査と7-12月中に7回の陸域調査(踏査)を行った。腹部の模様の写真により個体識別を行い、体長と体重を測定し、5月以降に捕獲された一部の個体は麻酔後、強制嘔吐法により胃内容物を調査した。体長と肥満度(Scaled Mass Index)、ケガを負った個体の割合を2003年~2010年に千葉県中央部で調査された耕作中の谷津環境で調査されたアカハライモリ個体群の記録と比較した。またイモリの胃内容物を生息環境中の土壌動物と比較した。その結果、2017年には58個体、2018年には208個体のアカハライモリが確認された(年間再捕獲率オス27%、メス21%)。発見個体数は4月が最も多く、7月には水域の消失と共に見られなくなった。その後10-12月に4月とは別の水域で発見された。再捕獲された個体の移動距離は最大で250mであった。調査個体群のイモリの体長は千葉県中央部の個体群と比較し、雌雄とも有意に小さかった。しかし肥満度は調査個体群の方が有意に高かった。ケガを負った個体の割合は調査個体群の方が高かった。調査個体群は栄養状態には問題ないが、体長が大きい個体が少なく、ケガ負った個体の割合が高いことから成熟後の死亡率が高いことが示唆された。イモリの胃内容物(のべ26個体分)からは8綱12目136個体の生物が検出された。ほとんどのイモリは水域で捕獲されたにも関わらず、多くの個体が陸棲の土壌動物を捕食していた。イモリの胃内容物にあった生物は生息環境中の土壌動物からも検出され、土壌中に多い生物を捕食していることが示唆された。


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