| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-398 (Poster presentation)
シマヘビ (Elaphe quadrivirgata) は日本全土に広く分布する普通種であり、先行研究から両棲類を主な餌生物とすることが明らかになっている。一方で、資源が限られる島環境などにおいては、両棲類、爬虫類、鳥類、哺乳類、少数の例として昆虫のみなど、その他の動物を主要な餌生物として利用する個体群が存在する。しかしこれまでに魚類を利用する例の報告はなかった。新潟県佐渡島大佐渡地域では、2015年から2017年に演者らの調査で、小河川でハゼを捕食していたシマヘビが2例発見された。このため本研究では、佐渡島でのシマヘビの魚食が恒常的に行われているのか、またそうであるならば、その背景となる要因を明らかにすることを目的として、河川周辺においてシマヘビを捕獲し、その胃内容物及び活動特性を調査した。
2018年5月から10月の佐渡島大佐渡地域の河川周辺での調査により、再捕獲を含め延べ61匹のシマヘビを捕獲した。そのうち10匹から胃内容物が採取された。10匹中5匹がハゼ類 (ヨシノボリ属、ウキゴリ属)、4匹がカエル類、1匹がニホンカナヘビを捕食していた。ハゼ食5例のうち3例は同一個体によるものであり、日常的にハゼを主要な餌として利用している個体の存在が確認された。体重と頭胴長から肥満度を求め、本州や島など他の5地域の個体群と比較すると、佐渡の個体群は上から5番目であり、佐渡島より低かったのは、爬虫類を主に捕食している屋久島個体群のみであった。また、空胃率は6地域中最も高かった。本研究によって、シマヘビのハゼ食が佐渡島に固有な特徴であることが強く示唆された。今後、ハゼ食の進化がどのような生態学的背景に基づくものなのか、餌生物の種類構成や生息密度を他の地域と比較調査し、明らかにしていきたい。