| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-400  (Poster presentation)

リュウキュウコノハズクの主要な繁殖期餌生物アマミヘリグロツユムシの餌植物利用
Microhabitat/food plants utilization of the major breeding season prey, Psyrana amamiensis, of Outus elegans in Amami Oshima forests

*西村健汰(中央大学), 井上遠(東京大学), 鷲谷いづみ(中央大学)
*Kenta Nishimura(Chuo Univ.), Tohki Inoue(Tokyo Univ.), Izumi Washitani(Chuo Univ.)

 奄美大島の森林域に生息するリュウキュウコノハズクの繁殖期の主要な餌生物を特定し、その時空間分布と餌植物を調べた。
 ヒナが巣外で給餌される時期(6月下旬から8月上旬)に、写真または動画によって餌生物を把握したところ、観察された89回の給餌のうち、約60%は直翅目昆虫が与えられ、最多の約30%をアマミヘリグロツユムシが占めていた。
 奄美大島の代表的な森林域において、林道沿いの林縁(落葉性の先駆樹種が生育)および林内(スダジイが優占する照葉樹林)のそれぞれ21区画(10m×2m)において、高さ2mまでの樹木および草本上にみられるアマミヘリグロツユムシを4月下旬から7月中旬にかけて定期的に数えた。4月下旬の調査では林縁で35個体、林内で2個体の幼虫(翅端まで50mm以下)が発見され、そのうちの14個体はアカメガシワ上で発見された。5月下旬には林縁で幼虫71個体(16個体はアカメガシワ上)、成虫1個体、7月中旬には林縁で成虫15個体、幼虫5個体(成虫3個体がアカメガシワ上)で見つかったが、林内では見つからなかった。
 餌植物の選好性を予備的に調べるため、恒温器内(明13.5h (26℃)、暗10.5h (20℃))で幼虫に常緑樹3種(スダジイ、イジュ、シシアクチ新葉)、落葉樹4種(アカメガシワ、イヌビワ、ハゼノキ、エゴノキ)、草本1種(ススキ)の葉を与えて飼育したところ、落葉樹の葉のみ摂食がみられアカメガシワを与えた場合に成長量が大きく成虫となった。
 リュウキュウコノハズクの繁殖期の主要な餌であるアマミヘリグロツユムシは、アカメガシワなどの落葉先駆性樹種を餌としていた。落葉先駆性樹種は林道などギャップに生育していることから、樹洞のある老齢林に生息するリュウキュウコノハズクも採餌は森林ギャップで行っている可能性が示唆された。


日本生態学会