| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-403 (Poster presentation)
ニホンウナギ(Anguilla japonica)はマリアナ諸島の西方海域で繁殖し、東アジアの淡水域および沿岸域で成長する降河回遊魚である。本種は国内における内水面養殖業全体の生産量の内、50%を占める水産重要種であるが、養殖用シラスの漁獲量は過去50年で90%以上も減少している。
本研究では小規模な河川におけるニホンウナギの分布と個体数密度および在不在に関わる要因を明らかにするために、愛媛県の瀬戸内海沿岸河川(21河川123サイト、幹線流路延長0.70 kmから11 km)において、本種を採集・計測し、各河川の環境条件(底質、カバー、護岸率等)を測定した。
結果として20 河川76サイトにおいて1057個体が採集され、ニホンウナギは対象河川のほぼ全てに分布していることが判明した。生息の有無および生息密度に対しては標高による強い負の影響が検出され、山地河川では中下流域のみ、平野河川においては上流域まで生息が確認された。全長120 mm未満の当歳魚は、標高14 m以下、河口からの距離3.2 km以内のサイトに分布していた。また、全長120 mm以上400 mm未満の小型の黄ウナギは標高67 m以下、河口からの距離7.3 km以内のサイトに、400 mm 以上の大型の黄ウナギでは、標高71 m以下、河口からの距離8.2 km以内のサイトまで広く分布していた。
これらのことから、本種は成長に伴って上流域へ生息範囲を拡大することが示唆された。また、底質やカバーといった要素が生息場所構造に関する第一要因として検出されなかったことから、本種の生息の有無や生息数の多寡は、基本的に海からの到達のしやすさによって決まると考えられた。