| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-404  (Poster presentation)

都市部に生息するオオタカの繁殖分布動態の決定要因と効率的な繁殖状況調査法の提案 【B】
Determinants of breeding distribution dynamics of the Northern Goshawks inhabiting urban areas and recommendations for monitoring of breeding status 【B】

*夏川遼生(横浜国立大学), 森要(野鳥の会神奈川支部), 小室静子(野鳥の会神奈川支部), 塩川孝(野鳥の会神奈川支部), 梅津潤(野鳥の会神奈川支部), 松田裕之(横浜国立大学)
*Haruki Natsukawa(Yokohama National University), Kaname Mori(Wild Bird Society of Kanagawa), Shizuko Komuro(Wild Bird Society of Kanagawa), Takashi Shiokawa(Wild Bird Society of Kanagawa), Jun Umetsu(Wild Bird Society of Kanagawa), Hiroyuki Matsuda(Yokohama National University)

種の生息分布動態はメタ個体群動態の理解に重要である.中でも,繁殖分布は種の長期的存続と強く関係するため,特に注目すべきである.鳥類の繁殖分布はしばしば理想専制分布により決定される.そのため,高質なサイトで占有回数が多くなり,幼鳥の生産の大部分がそのようなサイトに集中する.したがって,高頻度で占有されるサイトの保全は種の長期的存続を目指す上で重要な一歩である.都市化は生物多様性の減少に拍車をかけており,生物多様性保全の重要性が高まっている.猛禽類の生息地は生物多様性が高く,彼らの生息地保全は生物多様性保全計画の成功に重要である.本研究では,都市部に生息するオオタカ個体群を対象に繁殖分布動態を解析した.演者らは都市化が進行した神奈川県東部内の113か所に調査サイトを設定し2004-2018年にオオタカの繁殖状況を調査した.繁殖分布動態の決定要因を解明するために環境要因を共変量とした動的占有モデルを適用した.本手法は,共変量の関数として初期占有確率(ψ),局所移入確率(前年に非占有状態のサイトが翌年に占有状態になる確率,γ),局所絶滅確率(前年に占有状態のサイトが翌年に非占有状態になる確率,ε)を同時に推定できる.解析の結果,ψには森林面積率,開放地面積率,高植被率市街地面積率が正に,γには市街地面積率が負に,εには森林面積率が負に影響した.森林や開放地はψ,γ,εのすべてに影響したことから,オオタカの繁殖分布動態に極めて重要であり,都市開発によって,これらの環境を消失させないことが重要であることが示唆された.一方で,高植被率市街地はγやεと関係しないことから,長期的存続を考える上では重要度が低いと考えられた.都市部においてオオタカ繁殖地の長期的保全を実現するためには,市街地の拡大を制限することで,本種が強く要求する森林と開放地を適切に維持し,提供すべきである.


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