| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-406 (Poster presentation)
野外個体群の動態には、餌の供給量や捕食者のみならず病気(寄生者)による感染も支配的な影響を及ぼすことが様々な研究で示されている。しかし、個体群動態に対する病気の影響が、栄養環境や個体群の遺伝構造によってどのように変化するかはあまり良くわかっていない。その理由の一つは、病気原因生物と宿主を人為的に操作できる実験系の作成がしばしば困難なためである。山形県東村山郡の畑谷大沼では、ハリナガミジンコ(Daphnia dentifera)個体群のなかに微胞子虫に感染した個体が頻繁に見受けられる。微胞子虫(Microsporidia)はヒトにも日和見感染する生物群で、様々な動物の病原体として知られている。微胞子虫に感染したハリナガミジンコ個体は、潜伏期間中は非感染個体と外見だけでは識別できないが、微胞子虫が過度に繁殖すると白濁化し病態を示すようになる。この微胞子虫—ハリナガミジンコ系は、宿主個体群動態に及ぼす状況依存的な病気の影響や栄養環境など他の要因との相互作用を調べる良いモデル系になる可能性がある。そこで、演者らは畑谷大沼から採集した微胞子虫とハリナガミジンコ個体を用い、人為的に感染を操作する実験系の構築を行っている。本発表ではその経過を報告するとともに、その実験系を活用した実験課題やデザインについて議論する。