| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-414 (Poster presentation)
オスとメスは、様々な形質に違いがある。性特異的な形質は、自身の適応度を高める機能を果たす一方で、同種の異性や同性の振る舞いに対しても影響を与える。一般に雌雄差の研究は、繁殖期に多いが、個体の一生は1つの連続体であるため、初期生活史においても雌雄差があることが期待される。初期生活史の雌雄差を解明することは、性の役割を包括的に理解するために不可欠である。そこで本研究では、動物の初期生活史における内的・外的要因としての性の役割を検証するため、サクラマス幼魚の成長に注目し、自身の性と他個体の性がどのような効果を持つのかを実験的に調べた。実験では、サクラマスを20個の水槽に20匹ずつ入れ、4月から9月まで飼育した。個体は4月と9月に体サイズを計測し、成長率を算出した。また、成長に違いを生むメカニズムとして、干渉行動が考えられたため、6月には干渉行動の頻度も調べた。実験の結果、メスに比べてオスは成長率のばらつきが大きかった。これはオスのみ初期サイズに依存した成長が見られ、初期サイズが大きな個体はより成長するが、小さな個体は成長が著しく悪いというパターンによって説明された。干渉行動は、メスよりもオスで頻度が高かった。オスでは個体間の干渉が強いため初期サイズに依存した成長が見られたと考えられる。さらに本研究では、集団内のオスの数が増えるほど、オスもメスも個体の成長が抑制されることが分かった。これもオスで干渉行動の頻度が高かったことに起因すると考えられる。本研究により、動物の性は、成体期だけでなく、幼体期においても内的・外的要因として大きな役割を担っていることが示唆された。