| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-420  (Poster presentation)

ホンヤドカリ属3種における卵と幼生の形質比較
Comparison of the characteristics of eggs and larvae in three species of Pagurus

*今井絵美, 益田拓実, 和田哲(北海道大学)
*Emi IMAI, Takumi Masuda, Satoshi Wada(Hokkaido Univ.)

卵の大型化と卵数の増加はどちらも適応度の増加につながる。しかしメスが卵に投資できるエネルギーは有限であるため、卵が大きいほど卵数が減るというトレードオフが生じることが多い。また卵のサイズは幼体の生存率や成長に影響を与えると考えられる。つまり、卵サイズ、卵数、そして幼体の性質は、連動して異なると予想される。
 函館湾では、ヨモギホンヤドカリとテナガホンヤドカリのメスは、それぞれ4月から5月、10月から11月に年1回産卵して、両種とも幼生が孵化するのは翌年2月である。一方、ホンヤドカリのメスは主に4月から9月にかけて複数回産卵をする。本研究では、上記の予想を実証することを目的として、3種の卵サイズと抱卵数を種間比較し、さらに幼生の飢餓耐性と共食い頻度を比較した。また、ホンヤドカリについては、春季と夏季で季節間比較を行った。
 その結果、ヨモギホンヤドカリの卵は他の2種より大きかった (ヨモギホンヤドカリ: 平均 = 0.64 ± 0.01 SD, mm; ホンヤドカリ春季: 0.52 ± 0.01 mm; テナガホンヤドカリ: 0.52 ± 0.01 mm)。3種とも体長に伴い抱卵数は増加したが、テナガホンヤドカリは他の2種よりも回帰直線の傾きが大きかった。ホンヤドカリの卵は春季よりも夏季(0.45 ± 0.06 mm)の方が小さかったが、抱卵数には季節変化が見られなかった。飢餓耐性実験の結果、最も生存日数が長かったのはヨモギホンヤドカリであり、次いでテナガホンヤドカリ、そしてホンヤドカリの生存日数が最も短かった。ホンヤドカリの飢餓耐性に季節間の差は見られなかった。テナガホンヤドカリとホンヤドカリの共食い頻度に種間差は見られなかった。これらの結果は年1回産卵型の2種のほうが年複数回の種よりも1回の繁殖に費やす努力量が大きいこと、そして後者の幼生は飢餓耐性が低いことを示唆する。


日本生態学会