| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-422 (Poster presentation)
ゴカイ科コケゴカイは、日本各地の干潟における出現率が多毛類の中で最も高く、北海道から八重山諸島までの広範囲で生息が確認されており、干潟生態系の健全性を示す指標とも言える。一般に、多毛類の繁殖形態を含む生活史は多様性が高く、これは広域分布種の適応性の高さと関係していると考えられているが、これまで、広域分布種であるコケゴカイにおいては、繁殖を含む生活史についての知見が少数であった。近年、発表者らの研究によって、九州南部の本種個体群において、初秋に新規個体群が着底し、翌年の春に成熟を始める事が確認され、生活環が約一年のサイクルである事が判明した。しかし、詳細な繁殖期や繁殖生態については明らかにされなかった。そこで、本研究は、卵径や組織切片から、それらを明らかにすることを目的とした。
サンプルは、鹿児島湾奥の思川河口にて採集された。採集されたサンプルのうち、卵を持つ雌とそれらの卵について、体幅や卵径を測定した。また、未成熟と成熟オスとメスについて組織切片を作成し、それぞれの観察から成熟の過程を調査した。その結果、メスの成熟度とオスの成熟個体の出現時期から、3月の終わりから成熟を開始し、7月から8月にかけて繁殖している事が示唆された。また、発表では、これらの結果と合わせて、本種のオスとメスの成熟過程についても報告する。