| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-423 (Poster presentation)
腸内細菌や体表在細菌が宿主適応度を上昇させることは多くの動物で観察されており、近年では水生無脊椎動物でもこれら細菌により環境耐性が強化されたり、繁殖・成長率が高くなることが明らかにされている。しかし、宿主にとって有用な細菌もしくは細菌叢が世代間でどのように継承されるかは、ごく限られた生物群でしか明らかにされていない。浮遊生活をするミジンコ(Daphnia)属では淡水環境に広く生息するベータプロテオバクテリアであるLimnohabitans属がしばしば消化管内や胸肢で観察され、しかもこのバクテリアを保持している個体では繁殖力や成長速度が有意に上昇することが実験的に確認されている。宿主個体の適応度に有用な細菌であるなら、それら細菌を世代間で継承することが長期的な適応度の上昇にもつながるだろう。特にミジンコのような単為生殖(クローン繁殖)個体では、親にとって有用な細菌は子にとっても有用である可能性が高い。しかし、陸上生物とは異なり、ミジンコのような水中を浮遊生活する動物では親子での接触機会は極めて限られている。彼女らは、自身の適応度に有用な細菌をどのように世代間継承しているのだろうか?この疑問を解明するため、日本の平地湖沼に広く分布するDaphnia pulexを対象に無菌ミジンコを作成することで実験を行った。
実験には遺伝マーカーにより遺伝子型識別が容易にできる2系統(JPN1とJPN2)の個体を用い、まず無菌個体を作成した上で、一方の遺伝子型にLimnohabitans属を接種して繁殖させ、単独および他の遺伝子型個体と培養することで、垂直感染と水平感染の可能性を調べた。その結果について報告する。