| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-426 (Poster presentation)
樹上性齧歯類の多くは、樹洞や巣箱に営巣することが知られているが、どのような巣材を利用しているかということに着目し、定量的に評価した研究は、我が国においてはほとんどない。本研究では、樹上性齧歯類が利用する巣材を定量的に評価する事を目的とした。
岩手県西和賀町の森林に樹上性齧歯類の営巣を目的とした巣箱を106個架設し、見回り調査を行い、個体の直接確認や糞などから、利用・繁殖の有無および利用種を判断した。また、巣箱内に巣材が存在した場合、これを紙袋に入れて回収した。本調査の結果、ヤマネ、ヒメネズミ、ニホンモモンガの3種による巣箱利用が確認された。
巣材調査として、得られた巣材試料を1つずつバットに広げ、目視により巣材材料を品目ごとに分別・記録した。次に、出現したすべての品目を巣箱利用種ごとに集計し、頻度法(ある品目が出現した巣材試料数を、全ての巣材試料数で除した値の百分率により評価する方法)によって利用頻度を評価した。今回は、2017年7月から10月の間に得られたすべての巣材試料を調査した。
ヤマネについて53の試料を分析した結果、コケが73.6%と最も多く、スギやツルアジサイなどの繊維質の樹皮が67.9%と、これらは約7割の巣箱から出現した。続いて広葉樹樹皮45.3%、広葉樹の青葉と枯葉の合計が35.8%、地衣類24.5%という値が示されたが、広葉樹樹皮と地衣類はいずれも量は非常に少なくコケに付着して搬入されたものと思われた。
ヒメネズミについては16の試料を分析した結果、広葉樹枯葉が87.5%、広葉樹青葉が56.3%の巣箱から出現し、広葉樹の葉が最も高頻度で利用されたことが分かった。それに続き、スギ樹皮、広葉樹樹皮、コケの3項目が25%と同頻度で出現した。
ニホンモモンガについては、2つの試料を分析した結果、スギ樹皮が100%、広葉樹青葉が50%の値を示した。
以上のように樹上性齧歯類は種ごとに異なった材料から構成された巣材を利用する傾向が示された。