| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-429  (Poster presentation)

1卵か2卵か:ヤモリ種内の一腹卵数の変異は繁殖投資を反映しているのか? 【B】
One or two eggs: does clutch size variation of a gecko species reflect reproductive investment? 【B】

*酒井理(京都大学 理学)
*Osamu SAKAI(Kyoto Univ. Science)

ヤモリ科では系統的に一腹卵数の保存性が高く、ほとんどの種は一度の繁殖で2つの卵を産む。しかし、いくつかの種では例外がみられ、単為生殖種のオガサワラヤモリは通常は2卵を産むが稀に1卵のみを産むことが知られている。このような一腹卵数の変異がヤモリ科の種内で生じるメカニズムやその機能を明らかにするには、繁殖の継続的な観察と卵の定量的な評価が必要である。本研究ではオガサワラヤモリにみられる一腹卵数の変異に着目し、一腹卵数と卵の大きさまたは繁殖頻度とのトレードオフ関係を調べた。飼育下において本種のクローンCタイプの産卵頻度を記録し、回収した卵と孵化幼体の形態的特徴を1卵と2卵の場合とで比較した。33個体から回収された291クラッチのうち約30%が1卵であり、生涯にわたって1卵を産み続ける個体と1卵と2卵の両方を産む個体が確認された。繁殖を開始した成体では約3カ月おきに産卵がみられたが、1卵と2卵を産む場合とで産卵頻度の違いは認められなかった。1卵は2卵に比べて卵径が4%程度大きいが、1卵から孵化した幼体は2卵から孵化した幼体よりも体長が3%小さく体重が15%軽かった。これらの結果から、オガサワラヤモリにみられる一腹卵数の変異には個体差と個体内変動の2つの要因が寄与していると考えられる。また、1卵と2卵を産む場合とで産卵頻度や卵の大きさは変わらず、本種にみられる一腹卵数の変異は繁殖投資におけるトレードオフを反映したものではないことが示唆される。むしろ、母体の栄養状態が悪いときに繁殖への投資が低下することで、一腹卵数が減少し痩せた幼体が生まれている可能性が挙げられる。


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