| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-442  (Poster presentation)

雪害によるスギの樹幹欠損が幹表面呼吸の季節変化へ及ぼす影響
The effect of lost canopy on the seasonal variation of stem surface respiration in Japanese Cedar

*高橋春那(岐阜大・応用生物), 斎藤琢(岐阜大学・流域研)
*Haruna TAKAHASHI(Fac Appl Biol Sci,Gifu Univ), Taku M. Saitoh(RBRC, Gifu Univ)

 冠雪害はスギ林生態系における代表的な撹乱の一つであり、スギ林の炭素循環の長期変動を考える上で、雪害による自然攪乱がスギ林の炭素循環過程へ及ぼす影響を理解することが重要となる。本研究では、その一環として雪害によるスギの樹冠欠損が幹表面呼吸の季節変化に及ぼす影響を明らかにする。
 調査は岐阜大学流域圏科学研究センター高山試験地TKCサイトにて行われた。当該サイトは2014年12月に一部大きな雪害を受け、健全木(H)、樹冠一部残存木(BSc)、幹折木(BS)の樹冠状態の異なる3種類のスギが混在している。本研究ではH、BSc、BSの各種につき7個体、計21個体を観察対象とし、2018年4月から12月の間おおよそ月に一度、幹表面呼吸観測、肥大成長フェノロジー観測および環境要因計測を行った。またBSとBScについて木部組織を採集し観察、HとBScについて樹冠形状観測を行った。
 H、BS、BSc各種の幹表面呼吸量は計測期間を通しておおむねH、BS、BScの順に高く、温度依存性も異なった。その主要因として、幹表面呼吸に寄与するプロセスが、樹冠状態によって次のように異なることが示唆された。Hでは幹表面呼吸量の季節変化に対する肥大成長の影響が顕著であることから、Hの幹表面呼吸量は成長呼吸および維持呼吸によるものと示唆された。BScではいずれの個体も幹成長量はほとんど見られないものの、ほとんどの個体で形成層は健在であった。このことから、BScの幹表面呼吸量は成長呼吸の影響はほぼなく、維持呼吸によるものと示唆された。BSは幹折れ後4年を経過しており、幹成長は見られなかった。また、全ての個体で形成層が一部壊れている、または死亡している状態であることから、BSの幹成長呼吸量は微生物による分解呼吸によるものと示唆された。本研究の結果から、冠雪害によって幹表面呼吸量の空間的な不均一性が増加すると考えられる。


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