| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-444  (Poster presentation)

アーバスキュラー菌根菌が宿主植物の窒素安定同位体分布に及ぼす影響の解明
Nitrogen isotope analysis of arbuscular mycorrhizal mycelium to estimate isotopic discrimination during nitrogen uptake by host plants

*山川大輔(三重大学), 松尾奈緒子(三重大学), 松田陽介(三重大学), 木庭啓介(京都大学)
*Daisuke Yamakawa(Mie Univ.), Naoko Matsuo(Mie Univ.), Yosuke Matsuda(Mie Univ.), Keisuke Koba(Kyoto Univ.)

アーバスキュラー菌根菌が宿主植物の窒素安定同位体分布に及ぼす影響の解明
○山川 大輔(三重大・生物資源),松尾 奈緒子,松田 陽介(三重大院・生物資源),木庭啓介(京大・生態研)

植物の有機物中の窒素安定同位体比(δ15N)には器官間で差があり,それが細根の表皮細胞または細根に共生する菌根菌を介した吸収の際や体内での同化・転流の際の同位体分別に起因する可能性がある.本研究では,トウモロコシを種子からアーバスキュラー菌根菌感染区(AMF+)と非感染区(AMF-)に分けて2段階の窒素施肥条件(需要相当量N-とその3倍量N+)で栽培し,δ15Nの体内分布を比較した.13週間の栽培後に花,実,葉,茎,支持根,細根および菌根菌糸を採取し,乾燥重量と窒素量,δ15Nを測定した.トウモロコシの各器官の窒素量とδ15Nから算出した個体全体のδ15Nは,AMF+N-では肥料(硝酸アンモニウム)のδ15Nよりも約1.0‰高かったが,その他では同程度の値であった.一方,菌根菌糸のδ15Nは肥料のそれと同程度の値であった.以上より,細根またはAM菌を介した窒素吸収の際には大きな同位体分別は起きていないことがわかった.また,いずれの処理区においても葉のδ15Nよりも実のδ15Nの方が高く,その差はN-よりもN+,またAMF-よりもAMF+において大きく,AMF-N-において最小であった.葉で余ったδ15Nの低い窒素が実に転流することで実のδ15Nが低くなると報告されており,N-よりもN+の方が個体全体の窒素量とそれに占める実の窒素割合が大きかったことから,N+では窒素吸収量が多く,葉から実への窒素転流が多かったため,葉と実のδ15Nの差が大きくなったと考えられた.また,AMF+N-とAMF-N-では個体全体の窒素量には有意差がなかったが,実への窒素配分割合はAMF+N-の方が大きかったが,これはAM菌感染によって植物体内での窒素分配が変化し,実への転流が増加したためであると考えられた.


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