| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-445 (Poster presentation)
間伐とは樹木の密度を調節することで成長を促進させる作業であり、間伐により森林生態系の炭素固定量が増加することは明らかにされてきた。一方で炭素放出量に与える影響を調査した研究は少ない。1日の中での土壌呼吸(SR)速度の変化を捉えるには連続測定を行う必要がある。本研究では間伐後約1年が経過した区画(間伐区)と間伐を実施していない区画(非間伐区)においてSRの連続測定を行うことで、間伐がSRの日変化に及ぼす影響を解明することを目的とした。測定は2018年の6月と11月にそれぞれ1週間程度行い、地温と土壌含水率の連続測定も同時に行った。
間伐区と非間伐区においてSRの季節変化を比較すると1時間当たりの平均SR値は間伐区と非間伐区でそれぞれ6月に244.6と370.0、11月に251.3と 238.2mg CO₂ m⁻² h⁻¹の値を示した。夏季に間伐区でSRの値が低いのは、間伐により根の現存量が減少したことにより、根呼吸(RR)が低いためと推察された。また11月にSR値が夏季と逆転していることから、RRの寄与率が低下する冬季において、間伐により増加した従属栄養生物呼吸(HR)の影響が大きくなったことが示唆された。
間伐区における6月のSRの日変化は、午後に緩やかに増加を始め、20時頃にピークを迎えるとその後減少した。一方、非間伐区では、7時頃から急激に増加し、12時頃にピークを迎え18時頃までピークを継続した。この違いは、HRとRRの寄与率が異なるためと推察された。RRの寄与率が高い非間伐区では照度に依存した日変化を示し、HRの寄与率が高い間伐区では地温に依存した日変化を示した。しかし11月には両区でSRの日変化に大きな違いが見られなかった。地温が低下する冬季に植物や土壌微生物の活性が下がり、違いが生じにくくなったためと考えられる。