| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-448 (Poster presentation)
樹木細根は養水分吸収の主要な器官であり、植物の生産や森林の物質循環に重要である。根特性における種間差は、植物の資源の保守と獲得に基づいた生存戦略に関連すると言われている。したがって、多様な樹種の細根特性を明らかにすることは、植物の生存戦略や植物および森林の生態系機能における細根の役割を詳細に理解するために重要である。本研究は、2つの系統学種(裸子植物、被子植物)および3つの共生菌タイプ(外生菌、内生菌、根粒菌)に分類できる11樹種の細根系が、7項目の根特性によってどのように特徴づけられるのか調査した。長野県南部の温帯林に生育する11樹種の細根系を採取し、形態特性(分岐頻度、根組織密度、比根長)、化学特性(窒素、カリウム濃度)および解剖特性(中心柱、皮層体積)を測定した。7項目の根特性は、11樹種間で有意に異なった。分岐頻度は外生菌根が内生菌根よりも高く、比根長は被子植物が裸子植物よりも高い傾向があった。窒素、カリウム濃度および中心柱、皮層体積は根粒菌共生種が11樹種の中で最も高かった。これより11樹種の細根系には種特異性がみられ、この種特異性は系統学種と共生菌タイプに関連する可能性が示された。7項目の根特性の中で最も11樹種間のばらつきが大きかったのは分岐頻度であり、分岐頻度が樹種間差を最も表す根特性であることが示唆された。根組織密度を除く6項目の根特性を用いた主成分分析の結果、11樹種は系統学種および共生菌タイプが異なる5つの樹種グループにおおよそ区別された。これによって本研究で対象とした11樹種は、7項目の根特性に基づいて系統学種と菌共生タイプの両方によって特徴づけられることが明らかになり、この樹種間の根特性の違いは種特異的な根の生存戦略を表していると考えられる。