| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-449  (Poster presentation)

暖温帯コナラ林におけるバイオチャー散布がリター分解に及ぼす影響
Effect of biochar addition on leaf litter decomposition in a warm-temperate oak forest

*南埜幸也(神戸大・院・農), 藤嶽暢英(神戸大・院・農), 吉竹晋平(岐阜大・流圏セ), 鈴木武志(神戸大・院・農), 友常満利(早稲田大・教育)
*Yukiya Minamino(Kobe Univ.), Nobuhide Fujitake(Kobe Univ.), Shinpei Yoshitake(Gifu Univ.), Takeshi Suzuki(Kobe Univ.), Mitsutoshi Tomotsune(Waseda Univ.)

有機物を熱分解した炭化物の総称はバイオチャーと呼ばれる。バイオチャーは難分解性であり、また土壌改良効果を持つことから、森林生態系への散布によって効率的な炭素隔離が可能であると期待されている。しかしその一方で、バイオチャーは土壌有機物の分解を促進し、その隔離効果を相殺してしまう可能性がある。本研究では森林生態系の土壌表層に存在する、易分化性炭素に富むリター層に着目し、バイオチャー散布がリター分解に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
埼玉県本庄市のコナラ林にバイオチャーを散布した (0、5、10 t ha⁻¹) 調査区を設け、約3年間に渡ってリターの重量減少をリターバッグ法により測定した。リターバッグはバイオチャーの上層にあるリター (新リター)、下層にあるリター (旧リター) の2種類を用いて作成した。また、リターの物理化学的特性への影響についても検証した。
重量減少は、新リターにおいて実験開始から180、360、470日後にバイオチャー散布区で対照区よりも減少した傾向が認められ、特に10 t ha⁻¹区と0 t ha⁻¹ 区で有意な差が認められた。旧リターにおいては実験開始から85、360、553、673日後にバイオチャー散布区で対照区よりも減少した傾向が認められ、特に10 t ha⁻¹ 区と0 t ha⁻¹区で有意な差が認められた。すなわち、バイオチャー散布によって新リターは実験開始から約1年間、旧リターでは約2年間においては分解が促進された。また、バイオチャー散布区では乾燥時にリター含水率が向上した傾向が認められた。このことから、バイオチャーの持つ調湿作用や保水性により微生物活性が上昇したことで、リター分解が促進されたと推察された。しかし、バイオチャー散布によるリター分解の促進は一時的であり、炭素隔離効果に対する負の影響はほとんどないと考えられる。


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