| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-450  (Poster presentation)

天然林におけるササ・樹木の細根動態と土壌表層の鉄・アルミニウム・ケイ素動態の関係
A relationship between roots dynamics of Sasa dwarf bamboo and trees in natural forest and iron, aluminum and silicon dynamics of the soil surface.

*小野拓哉(北海道大学), 柴田英昭(北海道大学), 福澤加里部(北海道大学), 保原達(酪農学園大学), 松本真悟(島根大学)
*Ono TAKUYA(Hokkaido Univ.), Hideaki Shibata(Hokkaido Univ.), Karibu Fukuzawa(Hokkaido Univ.), Satoru Hobara(Rakuno Gakuen Univ.), Shingo Matsumoto(Shimane Univ.)

土壌中の炭素蓄積メカニズムとして、土壌鉱物表面で鉄(Fe)やアルミニウム(Al)などのイオンが土壌有機物と結合し、炭素が安定的に蓄積することが報告されている。土壌鉱物からの金属元素の溶出は植物の吸収が関与していることも指摘されており、例えばイネ科植物は他種と比べて多くのケイ素(Si)を吸収していることが知られているが、森林生態系におけるササが及ぼす土壌鉱物由来の元素動態への影響メカニズムは十分に理解されていない。本研究では冷温帯において森林生態系の樹木とササの根の作用を対象に、土壌内の鉱物由来の元素は変化するかについて問いを立てた。
 研究は、高木層にミズナラ(Quercus crispula)やトドマツ(Abies sachalinesis)、下層植生にクマイザサ(Sasa senanesis)が優占する北海道北部の天然針広混交林で行った。ササ密度が低い林冠下と高いギャップ下を調査スポットとし、根の土壌への影響を評価するため、イングロースコアと根遮断コアを用いた土壌の現地培養を105日間実施した。土壌はリター層を除去し、鉱質土壌のA層を採取、根を除去後、コアに充填した。培養前後の細根量、土壌の元素(Fe、Al、Si)含有率を測定し、逐次抽出法により形態別の含有率を求めた。また植物の栄養塩吸収量を求めるDepletion法を応用し、Si濃度に対するササと樹木根の滲出物量を定量した。
 培養後土壌において林冠、ギャップともに根の侵入により弱有機物結合性Fe含有率が高まり、強有機物結合性Feでは低くなった。根成長速度は林冠、ギャップともにササ根が樹木根より速かったことから、ササ根の侵入は、鉱物由来の有機物結合性Feの動態に寄与していた。またササ根はSi濃度が低い環境で、樹木根より滲出物を多く分泌していた。これらの結果から、冷温森林生態系の下層植生として優占するササ根の生産により有機物結合性Feの動態は変化し、ササにおける根滲出物の分泌作用は、土壌鉱物由来の元素動態に影響を及ぼす重要なメカニズムであることが示唆された。


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