| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-458 (Poster presentation)
近年、環境保全や持続的農業の観点から、農地における作物残渣の活用が注目されている。実際に、畑へ作物残渣をすき込むことは、窒素やリンなどの養分を後作物へ供給する重要な働きを持つ。化学合成肥料を使用しない有機農業において、こうした養分を利用する場合、残渣の効率的な分解が求められる。しかし、作物残渣の分解には様々な微生物や土壌動物が関係していることから、その生物学的プロセスを解明するのは容易ではない。また、これら多様な生物は、土壌の様々な物理化学的要因から影響を受け、残渣分解能を変化させるが、その実態も明らかではない。そこで本研究では、残渣分解に関わる生物分類群および残渣分解能に影響する土壌の物理化学的要因を明らかにすることを目的とした。
本研究では、26年間にわたりトウモロコシと冬コムギの二毛作を、無施肥、化学合成肥料、有機質肥料の連用区で行なってきた長期試験圃場を対象にして、メッシュサイズの異なるリターバッグを用いた残渣分解試験を行なった。リターバッグのメッシュには、全ての土壌動物が侵入できるサイズ(目開き5000μm)、大型土壌動物が侵入できないサイズ(263μm)、および微生物のみの分解能を見ることができるサイズ(30μm)の三種類を使用した。リターバッグの埋設は7月のトウモロコシの播種と同時に行ない、その後12週にわたり計7回サンプリングし、リターの乾燥重量を測った。また、リターバッグのサンプリングと同時に耕地表土を採集し、含水率、団粒構造、CN含有量、pHを土壌の物理化学的指標として計測した。
解析では、施肥体系やそれに起因する土壌物理的・化学的要因とメッシュサイズを説明変数として、リターの分解速度を応答変数としたモデルを構築し、各要因の影響を調べた。本発表では、この結果を基に、農地における作物残渣の分解促進に適した農地生態系管理の在り方について考察する。