| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-467 (Poster presentation)
コバノミツバツツジはもともと日当たりのよいアカマツ林などの二次林に多く分布していた。しかし、マツ枯れやナラ枯れ後の遷移の進行やマツ枯れ低質林の広がりに伴い、下層が暗くなり、コバノミツバツツジは衰退しつつある。近年は、シカ食害も発生し、コバノミツバツツジの衰退がさらに進んでいる。コバノミツバツツジの再生にかかわる研究は、実生や、伐採による萌芽再生はみられるが、根萌芽の研究事例は少ない。コバノミツバツツジの根萌芽に関する情報はなく、不明瞭な部分が多いのが現状である。そこで本研究は根萌芽及び実生が発生・定着する要因をその分布状況や環境要因との関係から明らかにし、今後のコバノミツバツツジの再生・管理の一助とすることを目的とした。
本研究では、京都市左京区笹ヶ谷町に位置する宝ヶ池公園の尾根部において一辺5m四方のプロットを12カ所設置するとともに、各プロットを1辺1mの正方形のグリッドに区分した。そして、相対光量子束密度、土壌硬度、土壌含水率を計測した。また、コバノミツバツツジの成木、実生、根萌芽の生存個体数と位置の計測を行うとともに、根萌芽は親木個体からの伸長距離、また、根萌芽については、親木の地際直径、親木と根萌芽の距離との関係を把握した。各グリッドの実生または根萌芽の有無と環境要因との関係をロジスティック回帰分析を用いて解析した結果、実生は明るい場所に集中して分布している傾向が得られた。一方、根萌芽は暗い場所に集中して分布している傾向が見られた。また、根萌芽は親木個体から0.8m以内に分布していることが判明した。つまり、根萌芽と実生は各々発生する位置や光環境が異なることが示唆された。コバノミツバツツジは明るいところに生育する傾向が知られているにもかかわらず、根萌芽は暗いところに発生していたため、今後の根萌芽が成長するには、光環境の改善が必要と考えられる。