| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-472  (Poster presentation)

ホンドタヌキにおける人工哺育個体の野生復帰検証
An examination of the reintroduction of hand-rearing Japanese raccoon dog

*宮本慧祐(東京農大・野生動物), 高井亮甫(東京農大・野生動物), 東野晃典(よこはま動物園), 山本誠(JATMeC(株)), 松林尚志(東京農大・野生動物)
*Keisuke MIYAMOTO(TUA, Wildlife), Ryosuke TAKAI(TUA, Wildlife), Akinori AZUMANO(Yokohama Zoo), Makoto YAMAMOTO(JATMeC Co.,Ltd.), HISASHI MATSUBAYASHI(TUA, Wildlife)

ホンドタヌキ (以下タヌキ)は傷病による保護が最も多い哺乳類である (環境省鳥獣統計情報 1997-2015)。傷病鳥獣で野生復帰に至るものは3割程であり、野生復帰が極めて難しい幼鳥及び幼獣は保護対象としていない場所もある (京都府野生鳥獣事業ガイドライン 2013)。神奈川県では毎年の保護獣にタヌキの幼獣も含まれ、人工哺育された後に放野されている。放野後の情報はなく、生存についても不明である。本研究は人工哺育タヌキにおいて野生復帰について検証し、有効性の有無を明らかにすることを目的とした。

横浜市立よこはま動物園で人工哺育された幼獣3個体を調査対象とし、2018年10月4日に横浜市都筑区の都築中央公園に放野した。調査方法は個体追跡を行うため、ラジオテレメトリーを行った。また個体情報を知るため、公園内に自動撮影カメラを設置した。

3個体中2個体では、10、11月に公園を行動圏としており、出入りは1日を除いて確認されなかった。2個体で行動をしている様子も確認され、公園内のタメフン場利用もみられた。12月に入ると行動圏の大幅な変化がみられ、それぞれ異なる行動圏を利用していた。また両個体でペアと考えられる個体との行動が確認され、映像も1個体で記録された。3個体中1個体は恐らく交通事故由来である顎関節骨折により、採食不能になり衰弱死した。生存日数は18日間であった。

結果よりタヌキの生存において、人工哺育の影響は少ないと考えられた。人工哺育でも野生個体とのペアを形成することが確認されたため、他個体との関係性の面で問題はないと考えられる。人工哺育下でもタメフンのような行動はみられ、野生下でも利用が確認された。親の影響を受けていないため、タメフンは生得的行動であるといえる。資源情報の共有なども行われているため (佐伯 2008)、新規環境を把握する上で重要な情報源であったと考えられる。


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