| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-477  (Poster presentation)

コウノトリが生息地として利用する水田景観の評価:谷戸地形と沖積平野の比較
Assessment of paddy field landscape as a habitat of oriental white stork: comparison between paddy fields in valley bottom and those in alluvial plain

*福島真理子(東京大学), 山田由美(慶應大学SFC), 一ノ瀬友博(慶應大学SFC), 板川暢(慶應大学SFC), 西垣正男(福井県自然環境課), 吉田丈人(東京大学)
*Mariko FUKUSHIMA(The University of Tokyo), Yumi Yamada(Keio University SFC), Tomohiro Ichinose(Keio University SFC), Satoru Itagawa(Keio University SFC), Masao Nishigaki(Fukui Prefecture), Takehito Yoshida(The University of Tokyo)

 コウノトリは、絶滅危惧種に指定されている大型の湿地性鳥類である。1971年に日本の野生個体群は絶滅したが、人工ふ化・増殖の取組みが進み、野生復帰の取組みも行われている。しかし現在、一部の生息地域では生息密度が過密となっていることが指摘されている。このため、コウノトリが日本各地に分散して各地域で定着することが、コウノトリ個体群の保全に求められている。本研究では、福井県が放鳥したコウノトリが生息地として利用した環境を評価することで、コウノトリが分散・定着する生息地の景観条件を検討することを目的とした。
 コウノトリに装着されたアルゴスGPS送信機から得られた位置情報をもとに、日中に摂餌などに利用した場所とその周囲の景観を評価した。本研究では、滋賀県高島市の沖積平野と愛知県知多半島の谷戸地域を分析対象とし、利用されやすい景観の特徴を評価した。各地域のコウノトリの観測点を在地点とし、観測点の最外郭内に偽不在地点を設定し、目的変数とした。在・偽不在の各地点からバッファーを設けて、バッファー内の景観要因(森林面積、耕作地・湿地面積、建物戸数、道路・線路長、平均TWI:地形的湿潤指標)を説明変数とした二項分布GLMを行った。さらに谷戸地域では、谷戸内の観測点数を目的変数とし、同様の説明変数を用いたポアソン分布GLMを行った。その結果、生息地選択に影響する要因として、耕作地・湿地が多く存在する景観ほど利用されやすく、道路・線路長が大きい景観は利用されにくかった。このことは、コウノトリが利用する景観が、周囲に水田のような餌場が多く確保できて、道路や鉄道のような、大規模な都市的土地利用が少ないことを示している。また、森林面積と建物戸数は、地形によって生息地選択に与える影響に差があった。これらの結果は、コウノトリに利用されやすい景観の特徴を明らかにし、地域の地形的特徴を考慮した生息地保全が必要な可能性を示唆している。


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