| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-478 (Poster presentation)
近年、生物モニタリング手法として環境DNA分析が注目を集めている。しかし、現在の環境DNA分析は、実際に生息している生物由来以外にも死骸、攪乱等で回帰してくる堆積物、排水などに由来するDNAも検出してしまう、という問題を抱えている。そこで、微生物研究などで利用されているPMA(Propidium monoazide)色素に着目した。PMA色素は、強い可視光に曝露すると二本鎖DNAと共有結合を形成し、PCRによる増幅を阻害する色素である。また、細胞膜不透過性であるため、放出されてから間もないと考えられる細胞膜で保護されたDNAのみを選択的に検出できる可能性がある。しかし、これまでPMA色素を魚類細胞に用いた研究例はない。本研究では、PMA色素を環境DNA分析で利用できるかの確認とその有用性についての検討を行った。
まず、PMA色素が魚類細胞においても利用できるかをゼブラフィッシュ(Danio rerio)の飼育水を用いて確認した。次に、野外で飼育されているコイ(Cyprinus carpio)の環境水でも細胞膜に保護されているDNAは存在するのか、また、いつまで検出できるかを確認するため、採水から0、1、2、3、5、7日後にろ過、PMA処理、DNA抽出を行い、qPCRでDNAを定量した。
ゼブラフィッシュを用いた実験から、PMA色素が魚類細胞にも利用できることが確認され、コイを用いた実験では、野外でも細胞膜に保護されているDNAが存在することが判明した。また、経時的なDNA濃度の変化から、細胞膜に保護されたDNAは保護されていないDNAより遅い速度で分解することが示唆された。PMA色素を用いたサンプルでは、採水から5日後に非検出となり、通常のサンプルでは7日後まで検出され、PMA色素を用いた分析では放出から5日程度のDNAを検出できることが示唆された。