| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-479  (Poster presentation)

環境RNA分析を用いた環境核酸の由来組織の推定
Estimation of the source of environmental DNA by gene-specific environmental RNA analysis focusing on tissue-specific messenger RNA expressions

*釣健司(龍谷大・理工), 池田静也(龍谷大・理工), 廣原嵩也(龍谷大・理工), 島田康人(三重大・院・医), 源利文(神戸大・院・発達), 山中裕樹(龍谷大・理工)
*Kenji Tsuri(Ryukoku Univ.), Shizuya Ikeda(Ryukoku Univ.), Takaya Hirohara(Ryukoku Univ.), Yasuhito Shimada(Mie Univ.), Toshihumi Minamoto(Kobe Univ.), Hiroki Yamanaka(Ryukoku Univ.)

近年、環境水中に含まれるDNAを回収・分析し、水生生物の在不在や生物量を推定する環境DNA分析が注目されているが、環境DNA分析では生物の「状態」についての推定はできない。しかし、もしもメッセンジャーRNA(mRNA)を環境DNAと同様に水試料から分析できるなら、生物の状態を反映する遺伝子を狙って検出することで、産卵や代謝などの状態を推定できる可能性がある。近年の研究によって、環境RNAを環境水中から回収・分析することが可能になりつつあるが、そもそも環境DNAとRNAを含めた環境核酸の放出源となっている組織が明らかになっておらず、これにより環境RNA分析で対象として取り扱うことが可能な遺伝子はどういったものであるのかを絞り込むことができない状況にある。本研究ではゼブラフィッシュ(Danio rerio)を対象種とし、上皮系組織で特異的に発現、転写されるmRNAを水中から検出し、環境核酸の由来組織の推定を試みた。組織特異的に発現する遺伝子5種のプライマーセットを開発し、それを用いてゼブラフィッシュの飼育水からの検出を行った。また、ゼブラフィッシュの複数の組織試料から組織特異的mRNAを検出し、対象遺伝子の発現と組織特異性を確認した。飼育水から腸管上皮(FABP2)、鰓(clcn2c)、表皮(muc5.2、pleca、krt5)で特異的に発現するmRNAを検出することができた。また組織特異性についてはclcn2cとmuc5.2について確認することができた。本研究の結果より、環境核酸の由来組織が鰓、表皮であることが強く示唆された。また、腸も由来組織の一つであると考えられる。これら上皮系組織が環境核酸の由来となっているという、重要な知見が得られた。今後は、これらの上皮系組織で発現が起こる各種生理反応については、環境RNA分析によって状態の推定が可能なのではないかと期待される。


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