| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-482  (Poster presentation)

高層湿原の縮小は融雪速度およびハイマツ侵入と関係しているか?
Is the shrinkage of alpine wetland related to snow melting time and creeping pine (Pinus pumila) invasion

*河井勇高(東北大学), 柴田嶺(総合地球環境学研究所), 中静透(総合地球環境学研究所)
*Yutaka KAWAI(Tohoku Univ.), Rei Shibata(RIHN), Toru Nakashizuka(RIHN)

日本の高山帯・亜高山帯では小規模な湿原が散在している。こうした湿原は環境変化や温暖化の影響に対して脆弱であり、多くの湿原で縮小が問題となっている。湿原の保全策を考えるためにも、湿原が縮小するメカニズムを明らかにする必要がある。湿原縮小の要因として、温暖化の影響により、気温の上昇と共に積雪期間や降雪量が減少し、融雪時期が早まっていることが挙げられる。湿原辺縁部において融雪期間が早まると、ハイマツなどの湿原侵入植物の生育期間が増加する。その結果、徐々に湿原侵入植物が定着・成長することで湿原が縮小すると予想される。本研究では、融雪時期とハイマツの侵入が湿原縮小に与える影響を調査した。
青森県八甲田の上毛無・下毛無湿原において、ドローンを用いて融雪前・融雪途中・融雪後の3期間の空中写真を撮影し、オルソ画像を作成した。また、融雪後の湿原において、pH、EC(電気伝導度)、ハイマツ伸長量、草本植生の高さを140地点で測定した。融雪途中のオルソ画像から、140地点の積雪の在/不在を調べた。また、オルソ画像と1967年の空中写真を比較し、140地点の湿原縮小の有無を調べた。融雪時期などの環境要因が湿原縮小の有無とハイマツ伸長量に及ぼす影響を調べるため、GLMおよびパス解析を行った。
GLMおよびパス解析共に、融雪時期が遅い地点で湿原の縮小が少ないという有意な効果が見られた。ハイマツの伸長量に対する融雪時期の有意な影響は検出できず、また湿原縮小に対するハイマツ伸長量の有意な影響も検出できなかった。以上の結果から、融雪時期の速さが湿原の縮小に影響していることが示唆されたが、その要因が湿原侵入植物であるハイマツの伸長によるものだという証拠は得られなかった。


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