| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-485  (Poster presentation)

リンゴの栽培方法と関係した絶滅危惧種アカモズの生息地選択
Habitat selection related to apple cultivation method by Brown Shrike Lanius cristatus superciliosus

*松宮裕秋(信大院・総合理工), 堀田昌伸(長野県環境保全研究所), 泉山茂之(信州大山岳科学研究所)
*Hiroaki MATSUMIYA(Shinshu Univ.), Masanobu Hotta(NECRI), Shigeyuki Izumiyama(Shinshu Univ)

 農地は生物の生息地として重要な役割を果たしている.そのため,生物多様性に配慮した農業の必要性が認識されている.長野県の一部のリンゴ果樹園には絶滅危惧種の鳥類であるアカモズLanius cristatus superciliosusが生息している.鳥類の保全には生息地選好性の理解が必要である.本種の生息には栽培・管理方法と関連した果樹園内の環境の違いや周辺景観の違いが関係していると考えられるが,その要因および影響は不明である.本研究では異なるスケールにおいて,本種の生息地選好性を推定し,本種の生息に適した果樹園の条件を明らかにすることを目的とした.
 まず,2016-2018年に長野県の5つの調査地において生息数調査を行った.次に,本種の確認地点と環境要因を用いた統計解析により,生息地選好性を解明した.営巣木については本種が営巣した果樹とランダムに選んだ果樹の樹高と胸高直径を比較した.局所スケールでは本種の確認地点およびランダムに発生させた地点と,そこから半径100m以内の環境要因(果樹園面積,除草の程度,防霜ファンの本数,電柱の本数,果樹園と他の環境の隣接長)との関係性を推定した.景観スケールでは調査地に500m四方のグリッドを設置し,グリッド内のつがい数と環境要因(土地利用面積,道路長,林縁長,標高,傾斜,果樹園の形状,果樹園の連続性)との関係性を推定した.
 調査の結果,営巣木はそれ以外の果樹より胸高直径が大きかった.局所スケールでは表土が草生で,防霜ファンや電柱の多い果樹園が選好された.景観スケールでは傾斜が緩く,果樹園が連続する景観が選好された.
 本研究から1.果樹が比較的太い,2.表土が草生,3.防霜ファンが設置されている,4.傾斜が緩い,5.広範囲に連続している,という5つの条件を兼ね備えた果樹園が本種の生息に最適であると推察された.本発表では,このような選好性を示した生態的プロセスや,本種の保全と果樹栽培の両立の可能性についても議論したい.


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