| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-491 (Poster presentation)
カヤネズミMicromys minutusはイネ科やカヤツリグサ科等の葉を編んで営巣することから、生息地内の植物群落の構成種や質が密接に関係していると考えられる。そのため本種の保全には営巣に適した草地管理が求められ、実際に管理作業が行われるような現場や保全管理計画が策定されるようなミクロスケールでの潜在的な営巣適地の予測は重要であると言える。そこで本研究では、ドローンを活用した詳細な相関植生図と現地調査を組み合わせることで、ミクロスケールでの本種の営巣選好性を明らかにすることを目的とした。
調査は2016年と2017年の2年間、神奈川県藤沢市の耕作放棄された谷戸で行った。谷戸底をくまなく歩き、営巣の有無を確認した。2016年と2017年の10月には、ドローン(Phantom4)を用いて、谷戸底全体の撮影を行った。高度30m程度で撮影し、得られた画像を合成ソフト(PhotoScan Professional)を使ってオルソ画像化した。低空で飛行させることで、高茎草本やツル性草本の種判別が可能となった。画像の判読と現地踏査を基にArcGISを用いて相関植生図を作成した。さらにArcGIS上にて対象地を10m四方のメッシュで覆い、各セル内の「カヤネズミの在不在」、「優占植物種の面積」、「林縁までの距離」を算出し、Dynamic occupancy modelで解析を行った。
その結果、オギ、ススキ、低茎湿性草本、ヨシ-オギ混生群落がカヤネズミの営巣地選択に正の影響を示した。中でもオギの被覆率が高い草地では巣の発見率が高いことがわかった。しかし、オギ群落をクズ等のツル性草本が覆ってしまうと、カヤネズミは営巣を回避する傾向にあることが示唆された。また、当地にはススキ群落が少ない中で正に影響したことや一方でヨシの優占度が高いにもかかわらずヨシ群落単体ではモデルで選択されなかったことから本種の営巣においての選好性が示唆された。