| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-492  (Poster presentation)

放棄畦畔への草刈り再導入による植物多様性の再生ー5年間の再生実験の成果ー
Plant diversity restoration of abandoned semi-natural grasslands: effect of reintroduction of mowing for five years.

*髙島敬子(神戸大院・人間発達), 長井拓馬(nouka nagai), 上原勇樹(神戸大院・人間発達), 勝原光希(神戸大院・人間発達), 丑丸敦史(神戸大院・人間発達)
*Keiko TAKASHIMA(Kobe Univ.), Takuma Nagai(nouka nagai), Yuki Uehara(Kobe Univ.), Koki Katsuhara(Kobe Univ.), Atushi Ushimaru(Kobe Univ.)

 世界的に農地の耕作放棄が増えるなか、農地周辺の半自然草地では管理放棄による高茎草本の優占や木本植物の侵入が草原生植物の多様性を減少させることが指摘されている。日本では、丘陵地の棚田で耕作放棄が増えているが、棚田の里草地は草原生希少種のホットスポットであることから、放棄による希少種減少が問題となっている。そのため、棚田の里草地を希少種の生育地として保全するだけでなく、放棄棚田の里草地において植生再生を行うことが必要であると考えられている。研究室では、2014年より兵庫県神戸市と篠山市の放棄里草地において、草刈り再導入による植生再生の過程を追跡する野外実験を開始した。本実験では、管理方法(草刈りの時期や頻度)の異なる実験区を設け、より効果的かつ省力的に植生再生を実現する方法の検討も行っている。実験開始後2年間の結果では、管理再導入により種数が増加するものの、伝統的な里草地(伝統地)と比較すると種数は少なく、種組成も異なっていた。ここから、2年間の実験管理では、植生再生には不十分であることが明らかになった。
 本研究では、上記の再生里草地において実験的管理を5年間継続することで、①管理の継続は植物多様性を伝統地と同程度まで増加させるのか、②管理方法の違いによって再生する植物組成は異なるのか、③放棄時の植生や里草地タイプ(畦畔、林縁、ため池堰堤)によって再生状況に差が生じるのかを明らかにすることを目的とした。
 5年に渡る実験の結果、管理再導入区の全植物種数と希少種種数は伝統地と同程度にまで回復した。また、管理方法ごとに再生した種の機能形質は少々異なっていること、放棄時の植生により再生後の種数に差があること、希少種は林縁やため池堰堤の里草地でより多く再生していることも明らかになった。以上の結果から、放棄里草地への管理再導入の効果と効率的な管理方法について議論する。


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