| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-493  (Poster presentation)

河原の微小な構造がカワラニガナに与える影響
The influence that the minute structure of the riverbank gives in Ixeris tamagawaensis Kitam.

*川嵜慶信(明治大学)
*Yoshinobu KAWASAKI(Meiji Univ.)

 カワラニガナは礫河原を生育地に持つキク科の多年草であり、環境省レッドデータブック2014において準絶滅危惧に位置付けられている。カワラニガナは埋土種子を形成しないので現存する個体群の保全管理が必要な種である。一方で多回繁殖型であり、種子の散布能力も高い種であるので出水による攪乱等により、ある1つの個体群が消失しても、別のハビタットで発芽定着できれば種の存続が可能な種でもある。今後播種による復元が必要となった場合、本種の種子が定着し新たな個体群を形成することのできるセーフサイトに関する知見は不足している。効率的な播種法を検討するためにカワラニガナの生育地の微地形の環境を調査した。
 本研究は夏季と秋季に行った。カワラニガナの定着するハビタット(礫の上、礫の隙間、礫の下、砂地、草原内の砂地)に、ろ紙で作成したカワラニガナの種子模型を、蒸留水につけた後に設置した。1時間ごとに種子模型の重さを計測、10分ごとに地温を測定し
種子模型の乾燥速度を求めた。またカワラニガナの個体群25箇所を選定し、個体数と草丈、礫の堆積状態を調査し、実際に本種が定着している場所と照らし合わせた。
 その結果、礫河原は季節ごとに、またミクロな環境それぞれで特性が全く異なることが示唆された。中でも地温が低く種子模型が水分を保持していた礫の隙間、礫の下がカワラニガナのセーフサイトとして適している可能性が高いことが示唆された。また夏季の礫河原ではどのハビタットにおいてもカワラニガナの種子の含水率が0%になる可能性が高いことが示唆された。よって夏季の播種は避けることが望ましいと考えられる。礫の有無が個体数と草丈に影響を及ぼしていたことから、種子の播種は礫のある場所に行うのが望ましいと考えられる。


日本生態学会