| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-496  (Poster presentation)

天竜川水系の河川敷周辺における希少植物群落の構造および外来植物との関係
Structures of rare riverside grassland plant communities and the relations with alien plants on the Tenryu-gawa River system, Nagano Prefecture

*中原美穂(信州大院・総合理工研), 大窪久美子(信州大学農学部)
*Miho NAKAHARA(Shinshu Univ.), Kumiko OKUBO(Shinshu University)

 近年、河川敷周辺の河川固有植物や草原性植物の減少や絶滅が全国的な問題となっている。発表者らは、予備調査において天竜川水系の河川敷でツメレンゲやカワラサイコ等の河川固有植物やスズサイコやイヌハギ等の草原性植物の希少植物の生育を確認し、これらは群落単位での保全が重要と考えられた。そこで本研究では、本水系の高水敷における希少植物群落の特性と立地環境を把握し、成立要因や現状を考察することを目的とした。また、オオキンケイギクやハリエンジュ等の外来植物との関係を考察し、希少植物の保全策を検討することを目的とした。
 調査プロットの面積は4㎡で、七つのベルトトランセクトに、合計30プロットを設置した。群落調査は植物社会学的植生調査法を用いて2018年8~9月に実施した。また、群落の立地環境条件を把握するために、相対光量子密度および土壌硬度の調査を同11月に実施した。さらに管理の履歴に関する聞き取り調査が行われた。
 植生調査の結果、全出現種は48種で、各種の相対積算優占度(SDR₂’)を算出し、TWINSPAN解析を行った。全プロットは5群落型に、全出現種は8種群に分類された。群落分類の指標種は主にイネ科多年生草本だった。共通種は特定外来生物のオオキンケイギクや在来木本のテリハノイバラ等であった。希少植物が集中したイヌハギ‐ハリエンジュ型とタカサゴソウ‐シバ型ではハリエンジュが優占し、オガルカヤ‐イタチハギ型でもイタチハギの優占度が高く、草本群落の樹林化の進行が指摘された。また、スズサイコ‐オオキンケイギク型では、オオキンケイギクによる群落構造の大きな変質が生じていると考えられた。希少植物の保全策としては、在来イネ科多年生草本(オガルカヤ、シバ、チガヤ)の優占群落に復元することが重要であり、そのためにはオオキンケイギクを含む競合種の駆除、また遷移進行の抑制を目的とした植生管理が必要である。


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