| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-509  (Poster presentation)

氾濫原湖沼群におけるイシガイ目二枚貝(Unionoida)の生息環境の種特異性
Species specificity of the habitat of the mussels (Unionoida) in the flood plains and lakes

*泉北斗, 三浦一輝, 根岸淳二郎(北海道大学)
*Hokuto IZUMI, Kazuki Miura, Negishi N. Junjiro(Hokkaido Univ.)

イシガイ目(Unionoida)は世界中の河川や湖沼などに生息する二枚貝である。また、イシガイ目は幼生時に一時的に魚類に寄生する複雑な生活史を持つ。日本では18種が報告されているが、その70%は絶滅危惧種に指定されている。その傾向は世界中で報告されており保全に向けた研究の蓄積が重要である。イシガイ目にとって氾濫原環境が重要であること、種ごとに生息適地は異なるとされることは知られているが、国内ではその研究例はまだ少ない。石狩川は、北海道中西部を流れる一級河川である。その氾濫原には、成因の異なる3つの湖沼タイプ(人工ショートカット湖沼、自然短絡湖沼、後背湿地)が多く残存し、イシガイ Unio douglasiae nipponensis ヌマガイ Sinanodonta lauta フネドブガイAnemina arcaeformisの3種の生息が報告されている。本研究は、湖沼タイプに関わる種特異的な分布を明らかにすることを目的とした。2018年10月に、各タイプ9水域において、グローブをつけた調査員が手で底質を撫でなでるように努力量(40分)でイシガイ目を採集した。また、一定頻度で、目合い3mmのタモ網を用いて同所を採集した。採集後、現地で種同定および個体ごとの写真撮影を行ない速やかに放流した。各湖沼で単位努力量当たりの個体数(CPUE)を算出し、画像処理により個体の殻長を測定した。その結果、種特異性は後背湿地のみで確認され、フネドブガイが特に他の2種に対して高い生息密度を呈した。タモ網採集から得られた手法精度係数で補正した殻長サイズの分布から、殻長が小さな未成熟個体の割合が3種共通で低かった(4–14%)。フネドブガイが後背湿地を選好すること、また、多くの水域でイシガイ目の再生産が停滞している可能性が示唆された。今後は、より詳細な現状を把握するために水質や底質などの局所的な環境条件や宿主となる魚類との関係性や稚貝期の生残率など様々な観点から調査を行う必要がある。


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