| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-510  (Poster presentation)

奄美大島におけるリュウキュウコノハズクOtus elegansの繁殖生態とランドスケープ要因
Breeding ecology and its associated landscape factors of Ryukyu Scops Owl in Amami-Oshima Island

*井上遠(東京大学), 松本麻依(中央大学), 吉田丈人(東京大学, 総合地球環境学研究所), 鷲谷いづみ(中央大学)
*Tohki INOUE(Univ. of Tokyo), Mai Matsumoto(Chuo Univ.), Takehito Yoshida(Univ. of Tokyo, RIHN), Izumi Washitani(Chuo Univ.)

自ら樹洞を形成することができず、既存の樹洞を利用して繁殖する二次樹洞営巣性鳥類の多くの種では、巣箱による実験から、繁殖に利用可能な樹洞の密度が主要な個体群制限要因とされている。絶滅が危惧されている種も多く存在し、その保全のためには、自然状態で繁殖に影響する景観要因を広域的に評価することが求められている。本研究では、奄美大島において、リュウキュウコノハズクの繁殖成功の空間パターンを観測し、それに影響する景観要因を評価することを目的とした。特に繁殖成功に大きく影響していることが予想される営巣場所と餌資源の影響について検討した。
2017年と2018年の繁殖期に、巣立ちビナのルートセンサスを行なった。2017年には58地点で98羽、2018年には104地点で203羽の巣立ちビナが確認され、奄美大島のほぼ全域で繁殖が確認された。うち約半数の地点では複数回巣立ちビナが確認され、2~3週間にわたって営巣場所周辺で親から給餌を受けていることが示唆された。親がヒナに給餌する餌の8割近くを、直翅目の昆虫が占めていた。巣立ちビナ確認地点と各センサスルート上に無作為に設定した未確認地点を目的変数に、森林植生タイプ別の面積、林縁長、道路長、市街地までの距離を説明変数として、一般化線形混合モデルを作成した。その結果、巣立ちビナの確認/未確認に対して、常緑広葉樹林の面積が正の効果を及ぼしている一方、採餌環境となっている可能性のある林縁長には有意な効果が認められなかった。今では限られた面積にしか存在しない成熟した亜熱帯常緑広葉樹林は、樹洞を有する大径木が多く存在することが報告されており、本研究の結果は、本種の重要な営巣・繁殖場所となっていることを示唆している。


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