| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-002  (Poster presentation)

神戸埠頭に侵入したアルゼンチンアリスーパーコロニー間の栄養ニッチ比較
Differences in dietary niche among four Argentine ant supercolonies in Kobe Whalf

瀬古祐吾(近畿大・院・農), 橋本洸哉(近畿大・農), 飯田恭平(近畿大・院・農), 森本龍之介(近畿大・農), 澤畠拓夫(近畿大・院・農), *早坂大亮(近畿大・院・農)
Yugo SEKO(Grad Sch Agric, KINDAI Univ), Koya HASHIMOTO(Fac Agric, KINDAI Univ), Kyohei IIDA(Grad Sch Agric, KINDAI Univ), Ryunosuke MORIMOTO(Fac Agric, KINDAI Univ), Takuo SAWAHATA(Grad Sch Agric, KINDAI Univ), *Daisuke HAYASAKA(Grad Sch Agric, KINDAI Univ)

経済のグローバル化に伴い,生物が本来の生態系から逸出する機会は急増しており,外来種が侵入地の在来生態系や農林水産業,人体へ与える影響の重大さから,早急な解決が求められる.侵略的外来種アルゼンチンアリLinepithema humile Mayrは,世界の侵入各地で大規模なスーパーコロニー(SC)を形成し,甚大な影響を引き起こしている.他方で,それらSCのほとんどが,メインスーパーコロニー(MSC)と称される単一のSCから形成されている.本種はSCごとに攻撃性やストレス耐性など生態学的な差を生じるが,そのような生態学的な差とMSCが世界各地で優占することの因果関係は解明されていない.本研究では,侵入地におけるアルゼンチンアリMSCのふるまいについて,多くの侵略的な外来種が有する特徴である「資源利用の柔軟さ」に着目し,本SCの特徴の抽出を試みた.調査は,日本に侵入したMSCであるJapanese Main(JM)を含む複数のSC(JM,KobeA(KA),KobeB(KB),KobeC(KC))が局所的に侵入する世界的にも稀な,神戸埠頭(ポートアイランド・摩耶埠頭)を対象に行った.炭素・窒素安定同位体比分析により得られた本種のδ13C,δ15Nから,各SCの同位体ニッチ(SEA),すなわち「資源利用の柔軟さ」を推定し比較した.その結果,同位体ニッチの広範さは,JM>KB>KA≒KCの順であり,さらに,この序列は,侵入各地におけるSC単位の分布・侵入傾向と一致していた.このことから,侵入各地でJMが優占する理由のひとつに,「資源利用の柔軟さ」が関与している可能性が示唆された.また,δ15Nの分散(広範さ)は,JM,KB,KCで同等に大きかったことから,属する栄養段階を柔軟にシフトすることはJMに特異ではなく,種レベルの特徴であることが考えられた.一方で,δ13Cの分散(広範さ)がJMに特徴的であったことから,JMは他のSCと比べハビタット利用の柔軟性に長け,このことが,JMの生息範囲の広範さに繋がっていると考えられた.


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