| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-003 (Poster presentation)
ミカヅキゼニゴケ(Lunularia cruciata)は、ゼニゴケ亜綱ミカヅキゼニゴケ科に属する三日月型の無性芽器が特徴的な雌雄異株の葉状体苔類であり、胞子体の形成は珍しいとされている。原産地は地中海沿岸部で、わが国唯一の外来種の苔類として知られる。
ミカヅキゼニゴケの生育は、北は青森県から南は鹿児島県まで計29都道府県で報告されているが、生育が記録された程度であり、ミカヅキゼニゴケに着目した分布調査は限られている。
2015年に、筆者らは京都市内の限られた範囲で分布調査を行い、41ヶ所でミカヅキゼニゴケの生育を確認した。その後、2017年に同じ範囲で再調査をしたところ、38ヶ所でミカヅキゼニゴケの生育を確認し、2015年と同じ生育地は36ヵ所、新たな生育地は2ヵ所だった。これにより、京都市内においてミカヅキゼニゴケの生育は一時的なものではなく、生育が維持されている可能性がある。また、何らかの形で生育範囲が拡大している可能性が考えられる。
今回、新たに調査範囲を広げ、生育環境を検討しようと試みた。調査を行った地域は、地域全体が緩やかに傾斜しており雨水がよく流れ水に富んでいる印象だった。また、地面全体が湿りやすい環境や井戸の利用も確認でき、地下水位が高い可能性も考えられる。一方で、開発に伴い水の流れを不可視化している場所も多く確認した。前回の調査と同様、ミカヅキゼニゴケの生育が確認された場所の多くが、社寺や植込みだった。園芸植物の移動に伴う生育範囲の拡大も考えられるが、道端のコンクリートの隙間で確認できた個体や、庭園以外への広がりもあり、生育範囲の拡大には謎が多い。今後も、ミカヅキゼニゴケの生育範囲がどのようにして広がっているのか調査を行いたい。