| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-004  (Poster presentation)

葛西用水におけるオオオナモミの秋季の種子発芽
Rough cocklebur seed germination at Kasai Canal in autumn

*須藤真理恵, 倉本宣(明大・農)
*Marie SUTO, Noboru Kuramoto(Meiji Univ.)

埼玉県越谷市を流れる葛西用水は、農業用水として利用されている。この用水を利用する5月から9月上旬ごろまでは、用水の水位が上がった状態になる。一方、水を利用していない時期である9月から4月下旬は水位が下がり、部分的に川底が露出した状態となる。この露出した川底に、オオオナモミが繁茂することが分かっている。
オオオナモミは一般的に野原や河川に生える、キク科オナモミ属の外来植物である。発芽時期は一般的に日本国内では5~6月、花期は9~12月である。果苞は秋から冬にかけて褐色に熟し、内部は2室、各室に1個の種子をもつ。
葛西用水の水位が低下した後の川底に生育するオオオナモミは、他の地域のものと発芽時期が大きく異なり、10月以降に発芽、開花する。この葛西用水のオオオナモミの秋期の発芽の調査を行い、他の地域の種子や、水位が高い時期と低い時期の種子とで比較し、発芽特性の地域間差や特異性があるかを明らかにすることを目的とした。
 2017年8月、同年11月-12月、2018年8月にかけて、越谷市内でオオオナモミの種子の採取を行った。8月は水位が上がっていた期間であるため、スコップ等を使用し川底に堆積していたオオオナモミ種子を採取した。また、比較対象として、東京都大田区の多摩川下流でも種子の採取を行った。これらの種子に対し、段階温度法で発芽実験を行った。
 実験の結果、葛西用水のオオオナモミ種子と多摩川の種子の間には、発芽率において地域間差が見られないことが推察された。また、葛西用水のオオオナモミ種子は、水中で埋土種子になることにより、発芽率が低下していたことが分かった。葛西用水のオオオナモミは、他の地域よりも遅く発芽するが、これは葛西用水の種子に特異性があるわけではなく、用水の水位の変化による発芽時期のずれである可能性が認められた。


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