| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-007 (Poster presentation)
アメリカザリガニにおいて、これまでに取り組まれてきた駆除は薬剤を用いた方法、籠罠を用いた方法、掬い取り、かいぼりなどが行われてきた。しかし、どれもコスト・時間がかかることや、他の生物への影響があることから、継続的な駆除は敬遠されがちであった。これらの方法の代替案として、塩ビ管を用いて人工的につくられた巣穴(以下、「塩ビ管巣穴」とする)が挙げられる。先行研究では塩ビ管巣穴の利用に着目し、塩ビ管巣穴の適切なサイズが得られている。本研究では籠罠を設置することのできない低水深環境において、塩ビ管巣穴を用いた個体数管理が実用的に行えるか検討することを目的とする。塩ビ管巣穴で捕獲された個体の頭胸甲長は掬い取りにより捕獲された個体の頭胸甲長に対して有意に大きかった。また、掬い取りでは調査中にモツゴを例としたザリガニ以外の生物の混獲が発生した。そのため、大型個体が取れて、かつ混獲が起こらない塩ビ管巣穴は低水深環境において適切な駆除方法の1つといえる。アメリカザリガニの移動することのできる湿地や水域は調査地の近くに存在しないため、調査地の環境は閉鎖性水域と考えてよい。個体数推定と捕獲調査の結果から、9月と10月には少なくとも繁殖参加個体の2割をとることができたと推測される。閉鎖性水域における2割の繁殖参加個体群の捕獲は、アメリカザリガニの個体数に対して負の影響を与えうる。捕獲された個体の頭胸甲長を基に本研究の調査地に適している塩ビ管巣穴の長さは56mm内径の塩ビ管と推測された。56mm内径塩ビ管が44mm内径塩ビ管より有意に大きな個体を得られていたため、56mm内径塩ビ管の適正は支持される。今後は56mm内径の塩ビ管巣穴を設置することで効率的な駆除が見込める。