| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-009 (Poster presentation)
最近、公園や河川敷の芝生に混生し、分布を急速に拡大している冬型一年草の外来植物メリケントキンソウが各地で見つかっている。メリケントキンソウは、南米原産の30cm程度の小さな植物であるが、果実に鋭いトゲがあり、春に芝生の中に無数のトゲのある果実をばらまき、公園の利用者を悩ますことが多い。
日本での記録は、和歌山県西牟婁郡周参見町で1930年に採集された記録が最も古く、その後、西日本の各地で散見されるようになった。和歌山周辺の港から南米へ遠洋漁業に出る船に付随して侵入したと推察されている。現在では関東以南の太平洋側、瀬戸内、九州を中心に分布を拡大している。世界的にも、北アメリカ、ハワイ、オーストラリア、中国、ヨーロッパ等、温帯から亜熱帯の各地に分布を拡大し、問題になっている。
今回の発表では、近畿地方におけるメリケントキンソウ分布の現状と、継続観察から得られた、生態的防除の可能性について報告する。2011年からブログなどを参考に現地での確認および、KYO、OSA、HYO、WMNHなどの植物標本庫での標本調査により分布図を作成した。大阪市内の20地点の公園を調べた結果、10地点で、メリケントキンソウの生育を確認した。和歌山県は、標本調査で、和歌山市から紀伊田辺市までの海岸沿いの公園やグラウンドを中心に分布していることが明らかとなった。
兵庫県三田市の公園の経年観察から、シロツメクサが冬季に繁茂する芝地では、メリケントキンソウの分布拡大が見られなかった。また奈良公園の芝地では、シカの被食圧により、メリケントキンソウの成長抑制や種子生産の減、、分布拡大などが抑えられていることが分かってきた。