| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-012  (Poster presentation)

河川植物群集における花粉・花蜜生産への外来種の貢献度の季節変化
Seasonal changes in the contribution of alien species on the pollen and nectar sugar production in riparian plant communities

*江川知花(農研機構・農環研), 小山明日香(森林総研)
*Chika EGAWA(NARO), Asuka KOYAMA(FFPRI)

都市やその周辺では、外来植物がいて当たり前の生態系が長期間維持されている。このような生態系では、外来植物が生物間の共生関係の中に取り込まれ、何らかの機能を担っている可能性がある。たとえば外来植物には、開花数が多い種や開花期間が極めて長い種が存在するが、このような外来植物種は多量の糖や花粉を絶え間なく生産し、訪花昆虫の重要な餌資源となっているかもしれない。この可能性を検証するため、外来植物と在来植物が混生する都市近郊の植物群集において、外来・在来それぞれの種が生産する花資源量を定量し、外来植物由来の花資源の訪花昆虫の餌としての重要性について検討した。

茨城県内の河川敷草地4サイトにおいて、2018年4月~12月まで、単位面積当たりの開花数と、セイヨウミツバチ、ハナバチ類、カリバチ類、ハナアブ類の訪花数を開花種ごとに記録した。主要な開花種約50種について、1花当たりの花蜜糖量および花粉体積を算出し、これと開花数から各サイトにおける単位面積当たりの糖および花粉現存量を推定した。

糖および花粉現存量は、いずれのサイトでも外来種由来の量が在来種由来の量を大きく上回った。セイヨウミツバチの訪花は観察期間を通じて外来植物のみに限られた。ハナバチ類とカリバチ類は、春には外来植物に多く訪花したが、以降は在来植物へより多く訪花した。ハナアブ類の外来植物への訪花は春と秋にピークとなった一方、在来植物には季節を通じて同程度訪花していた。

以上より、都市近郊の生態系では、外来植物によって多量の花資源が生産されており、この資源はセイヨウミツバチや野生の訪花昆虫の餌として機能していることが示された。一方で、野生昆虫の外来植物への訪花数には明瞭な季節性があったことから、外来植物由来の花資源の重要性は常に高いわけではなく、その役割は季節変動していると推察された。


日本生態学会