| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-013 (Poster presentation)
アルゼンチンアリは特定外来生物に指定されている南米原産の外来アリである.本種に対する効果的な防除方法としてベイト剤に用いた化学的防除方法が実施され事実上の根絶成功事例が報告されている.しかし地表にベイト剤を設置する本方法は,野生鳥獣やペット,幼児による持ち去りや誤食等のリスク等を伴うことから,より安全な方法に改良することが望ましい.本種の主な餌はアリマキ等の出す甘露であり,樹上に設置した餌に多数集まることから,樹上にベイト剤を設置することで上述のリスクを軽減しつつ化学防除ができると期待した.そこで本研究では,地表および樹上に設置したベイト剤の本種への効果を比較し,さらにベイト剤設置の前後での本種の個体数の経年変化についても調査を行なった.調査地は兵庫県神戸市ポートアイランド内の9地点とし,これらを薬剤処理区(樹上設置と地上設置)と無処理区の3つに分け,そこでの植栽木であるシャリンバイ,キョウチクトウ,ヤマモモの3樹種各30本を調査木とし,ベイトトラップとビーティング法によりアルゼンチンアリの個体数を調査した.その結果,シャリンバイとキョウチクトウでは,樹上および地表における薬剤処理区で得られたアルゼンチンアリ個体数は,無処理区に比べ同等に低い値となった.一方ヤマモモでは,無処理区の個体数が薬剤処理区の個体数を下回る結果となったが,樹上設置区と地表設置区で得られた個体数は同様の傾向を示した.経年変化を調べた結果,キョウチクトウ,ヤマモモ共に薬剤処理を始めた2017年には前年より減少または前年とほぼ横ばいとなっていたが,無処理区では前年よりも個体数が増加していた.これら結果から,樹上へのベイト剤設置は地上への設置と,同等かそれ以上の効果があり、アルゼンチンアリの樹木利用は、必須ではないもののかなり積極的なものであることが示唆された.