| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-018  (Poster presentation)

九州北部におけるDNA分析による外来・国内外来生物のモニタリング
Monitoring survey of introduced species in northern part of Kyushu using DNA analysis

*大井和之, 城島健(九州環境管理協会)
*Kazuyuki OOI, Takeshi Jojima(Kyushu Environ. Eval. Assoc.)

地域の生物多様性を守るという観点から、環境アセスメントが義務づけられていない河川改修や農業用水路の工事においても、生物調査が行われ、希少種の保全対策や外来種の分布拡大防止策が実施されるようになってきた。特に、外来種と在来種の交雑や、本来の生息域外への人為的分布拡大、異なる地域由来の個体の放流による遺伝的撹乱が想定される場合は、形態による種同定だけでなく、DNA分析によって外来系統であるかどうかを判定した上で対策を検討するケースが増えている。
本報告では、九州北部地方で実施した以下の3事例を紹介する。(1)メダカのミトコンドリアDNAのハプロタイプ分析により、飼育系統が野生集団に侵入していることとペットショップで流通しているクロメダカにはキタノメダカとミナミメダカが混在していることが明らかになった。(2)ニッポンバラタナゴとタイリクバラタナゴの交雑をミトコンドリアDNAのハプロタイプとマイクロサテライトの遺伝子型から集団レベルと個体レベルで分析した。(3)水路に生育していたアサザのマイクロサテライト分析で市販されている株と同じ遺伝子型が確認された。
行政や事業者が実施する調査では、対象地域以外のサンプルを分析することは難しい。交雑や地域系統の分析では比較対象となる集団の遺伝情報が重要であり、論文やデータベースに公表されているデータを参照して解析することになる。ミトコンドリアDNAのハプロタイプ(塩基配列情報)はDNAデータバンクに登録・公開されていて先行研究論文にもアクセスしやすいが、個体レベルでの交雑判定はできない。マイクロサテライトの遺伝子型はデータベース化されていないために先行研究のデータとの比較が難しく、このような調査で適用できる生物種は限られている。地域の生物多様性保全のために、外来種による遺伝的撹乱が想定される希少生物の遺伝子型のデータベース化が求められている。


日本生態学会