| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-021 (Poster presentation)
外来種の侵入は、捕食や競争、交雑など、在来の生態系にさまざまな影響を及ぼす。特に、形態で区別が困難な近縁種や亜種の場合、気づかないうちに外来種が広がっている危険性がある。また、愛玩動物や釣魚など人との関わりが大きい生物では、管理に際して社会的な難しさを伴う。
シマリス(Tamias sibiricus)は1970-2000年代にかけてペットとして人気を擁しており、年間数万個体が韓国や中国から日本に輸入されてきた。シマリスがいなかった本州の複数地点において、これら飼育個体の野生化が報告されている。一方、北海道においては亜種エゾシマリス(T. sibiricus lineatus)が生息しているが、大陸産シマリスと外見が類似しているため外来個体の侵入状況は不明である。これまで交雑による遺伝的汚染が懸念されてきたが、捕獲が困難なこともあり詳細は全く分かっていない。
そこで本研究では外来および在来シマリスを区別するためのDNA解析について検討した。サンプリングでは捕獲の必要がない糞からのDNA抽出も試みた。北海道の複数地点からエゾシマリスのサンプルを入手しmtDNAのcyt-b領域を増幅し、先行研究で行われた大陸産のシマリスと比較した。解析の結果、北海道のエゾシマリスは大陸産のシマリスと遺伝的に離れており、外来シマリスと区別できることが明らかとなった。さらに、北海道内のある地点からはチョウセンシマリスの遺伝子型が検出された。なお、20-30%の糞サンプルから遺伝子型が決定でき、一定の有用性が示された。今後より多くのサンプルを集めてペット由来シマリスの詳細を明らかにし、さらに核DNAによる交雑の有無を確認する必要がある。