| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-026 (Poster presentation)
これまで、植物ウイルスの研究は病理学の分野を中心に発展し、病徴を指標として探索が行われてきた。一方で以前より、農作物の大量枯死において見られるような激しい病徴を伴う感染は、自然環境下では宿主の野生植物にとってもウイルスにとっても適応的でないと考えられてきた。近年、次世代シークエンシング技術の発展とともに、外部病徴のない植物におけるウイルス感染が明らかとなり、これまで見過ごされてきた自然環境下におけるウイルスの多様性や宿主との相互作用への関心が高まっている。野生植物集団は、生育環境が多様であり、遺伝的変異が大きい。また、ウイルスと宿主との相互作用の進化的歴史が長いことを踏まえると、野生植物においては、農作物とは異なるウイルスの種構成や相互作用が見出されることが期待される。
私たちはRNA-Seqを用いて、アブラナ科野生植物集団において、ゲノムの性質に関わらずウイルスを網羅的に検出する手法の開発と、宿主の遺伝子発現応答の同時的な解析を行ってきた。本発表では、近畿の複数の自然植物集団で、生育する全アブラナ科種を対象にウイルスの探索を行った結果について報告する。また、多検体のRNA-Seqを可能にするために私たちが確立した、低コストかつ簡易なライブラリ作製手法についても紹介する。